フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

フランス語の慣用表現「美しいを持つ⇒ たとえ~だとしても」

  Si elle n’avait pas remis le revolver dans le tiroir, c’est. il le savait, qu’elle n’avait jamais pu s’habituer aux armes à feu.  Elle avait beau savoir que l’automatique n’était pas chargé, elle n’y aurait touché pour rien au monde.

(©Georges Simenon : Le revolver de Maigret; Chap.1er) 

 

 もし彼女が拳銃を引出しの中にしまわなかったとしたら、それは彼も知る通り彼女が銃火器を扱い慣れることなど全くなかったからだった。たとえ彼女が拳銃には弾が入っていないと知っていても、むやみにそれに触れることはなかったのだ。

(#67『メグレの拳銃』第1章)

∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞

 

*実は、前の晩にメグレの家を訪れた同僚のために、メグレはFBI から貰った拳銃を出して見せていたのだった。その後、むき出しのままではなかったにしろ、その箱をサロンに置いたままのところに来客を通したのが盗難にあう原因となった。

 

f:id:maigretparis:20200602091213j:plain

Crédit photo : L’écran sur Youtube

Téléfilm “Le revolver de Maigret” de “Les enquêtes du commissaire Maigret” 

© Antenne 2, 1985; ©INA - Institut National de l'Audiovisuel

 

Si elle n’avait pas remis le revolver < avoir, remettre(シ・エルナヴェパ・ルミ・ルヴォルヴェ)もし彼女が拳銃をしまっていなかったなら(大過去形)

 

dans le tiroir(ダンルチロワー)引出しの中に

 

il le savait < savoir(イルルサヴェ)彼はそのことを知っていた(半過去形)

 

*c’est qu’elle n’avait jamais pu s’habituer < être, avoir, pouvoir(セケルナヴェ・ジャメピュ・サビチュエ)それは彼女が決して扱い慣れることがなかったからだ(従属節は大過去形)c’est que ~:それは~ということだ

 

aux armes à feu(オーザルム・アフー)銃火器

 

*Elle avait beau savoir que < avoir(エラヴェ・ボーサヴォワール・ク)たとえ彼女が~を知っていたとしても(半過去形)

avoir beau +inf.(慣用句:たとえ~であっても、~だけれども)beau の後の動詞は常に原形。

 

l’automatique n’était pas chargé < être, charger(ロートマティク・ネテパ・シャルジェ)自動拳銃には弾が入っていなかった(半過去形)

 

elle n’y aurait touché < avoir, toucher(エルニオーレ・トゥシェ)彼女はそれに触れなかっただろう(条件法・過去形)

 

*pour rien au monde(プーリァンノーモンド)決してわけもなく、むやみに(au monde は「この世で」だが、ここでは rien を強調するために付けている。「世界中の~をもってしても」などと、大げさな表現をフランス人はよく使う。)