フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

フランス語の慣用表現「看板の中に転ぶ⇒ 罠にかかる」

ー Deux ou trois fois, j’ai tendu des pièges, demandant à des bijoutiers
d’exposer des pièces rares.
ー La bande n’est pas tombée dans le panneau ?
Maigret secouait la tête et rallumait sa pipe.
ー Je suis patient, se contenta-t-il de grommeler.
Le directeur, moins patient que lui, ne cachait pas son mécontentement.
(©Georges Simenon : La Patience de Maigret; Chap.1er)

「二度か三度、宝石商に頼んで珍しい品を展示する罠を張りました。」
「一味は罠に引っかからなかったのか?」
メグレは首を振って、パイプに再び火をつけた。
「私は我慢強いので」とつぶやくだけだった。
総監はメグレよりも我慢強くないので、不満な気持を隠さなかった。
(#91『メグレと宝石泥棒』第1章; 原題は「メグレの忍耐」)

∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞

Deux ou trois fois(ドゥズゥトロヮフォワ)二度か三度

tendu des pièges < tendre(タンデユ・デピエージュ)罠を張った

bijoutiers(ビジュティエ)n.m.pl. 宝飾店主

bande(バンド)n.f. 一味、隊、団、党

*n’est pas tombée dans le panneau ? 直訳では「看板の中に転ばなかったのか?」
tomber dans le panneau(トンベ・ダンル・パノー)罠に引っかかる
昔は panneau(パノー)は板ではなく、狩猟で使う「網」という意味があったので、網を罠としてかけておいた所に兎などが引っかかった場合に使われた。
イメージ 1
現代ではフランス人も参考画像にある通り「看板の中に転ぶ」ような感じで変に思っているようだ。

Canalblog

イメージ 2


Crédit photo ‘’Le savais-tu ?’’


*secouait la tête < secouer(スクエ・ラ・テト)首を横に振る(否定する)tête は頭だが、首すじから上全体をさす。それから「~ではなかったのか?」という否定疑問文に対する応答では、日本語なら「はいダメでした。」とうなづくところを、フランス人は「やはりダメでした。」と首を横に振るところが完全に異なっている。この首を縦に振るか横に振るか、瞬時に反応できるようになるのが、フランス語習得のバロメーターにもなる。
rallumait < rallumer(ラリュメ)v.t. 再び火をつける

se contenta-t-il < se contenter(スコンタンタティル)彼は~するだけだった(単純過去形・倒置形)

grommeler(グロムレ)v.t. 口ごもる、つぶやく

ne cachait pas < cacher(ヌカシェパ)隠さなかった(半過去形)

mécontentement(メコンタントマン)n.m. 不平、不満