フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

(猫のいる情景)リバティ・バー

  Derrière la vitre du bar, Maigret aperçut, en y collant le front, le chat qui se léchait les pattes.(---) Le chat ronronnait déjà en se frottant à ses jambes hydropiques.

(©Georges Simenon : Liberty Bar; Chap.8) 

 

 メグレが顔をくっつけて覗いたバーのガラス窓の向こうでは猫が脚をなめているのが見えた。(---) 猫はすでに喉をゴロゴロ鳴らしながら彼女のむくんだ脚の間をこすって歩いていた。

(#17『リバティ・バー』第8章)

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Crédit photo : Les Trente-six Chats de Marie Tatin (1993)

de Sylvie Chausse (Auteur), François Crozat (Illustrations)

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*原作者のシムノンは猫好きだったと思われる。メグレ物の中にはしばしば猫が出てくる場面が描かれる。多くの場合はコンシエルジュ等の女性の飼い猫であり、その人々の生活風景にさらなる親近感を醸し出している。シムノンには「猫」(Le chat) という文芸作品もあるが、それはもっと深刻な内容になっている。

 

Derrière la vitre du bar(デリエール・ラヴィトル・デュバー)バーのガラス窓の向こうに

 

aperçut, en y collant le front < apercevoir, coller(アペルシュ・アンニコラン・ルフロント) そこに顔をくっつけて~を見かけた(単純過去形、現在分詞)

 

le chat qui se léchait les pattes < se lécher(ルシャ・キスレシェ・レパット)猫が脚をなめていた(半過去形)



Le chat ronronnait déjà < ronronner(ルシャ・ロンロネ・デジャ)猫がすでに喉をゴロゴロ鳴らしていた(半過去形)

 

en se frottant à < se frotter(アンスフロタン・ア)~に身体をこすりつけながら(現在分詞)

 

*ses jambes hydropiques(セジャンブ・イドロピク)むくんだ脚

hydropique adj. 水腫性の、水腫にかかった



**参考再出:

1)フランス語の慣用表現「その頭数を持つ ⇒ 何となく気難しい」2018.10.10

コンシエルジュの飼い猫(#91『メグレと宝石泥棒』第3章; 原題は「メグレの忍耐」)

https://maigretparis.hatenablog.com/entry/18680096

 

2)(フランス語警察用語)音を立てず侵入する、猫も起こさずに、見張り番  2019.01.19

(#65『メグレと消えた死体』第2章; 原題は「メグレとのっぽの女」)

https://maigretparis.hatenablog.com/entry/18783475

 

3)フランス語の慣用表現「自分を勇気づける⇒気力を持たせるために」2019.08.11

コンシエルジュの飼い猫(#41『セシルは死んだ』第1部・第4章)

https://maigretparis.hatenablog.com/entry/2019/08/11/085324