フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

フランス語の慣用表現「忍耐の宝庫を開ける⇒ 堪忍袋の緒を切らさぬように」

ー Je suis de service de nuit toute la semaine.(---)

  Toujours aussi exaspérant !  Maigret était obligé de déployer avec lui des trésors de patience qu’il n’aurait pas eus (---) pour n’importe lequel de ses inspecteurs.

(©Georges Simenon : Maigret, Lognon et les gangsters; Chap.2) 

 

「私は今週いっぱい夜勤ですから。」(---)

 いつもこうしてイライラさせられる! メグレは彼に対して堪忍袋の緒を切らさぬようにしなければならなかった。それは彼の配下の刑事たちの誰にもすることはなかったのだが。

(#66『メグレと生死不明の男』第2章)

 

∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞

 

*メグレはポッツォの店の張込みをやろうと思った。だが一日中動き回って疲れているロニョンにはキツイと思い、警視庁から別の刑事が来るまでの間だけちょっとと言ったのだが、ロニョンは「今週いっぱい夜勤ですから大丈夫」と言い張るので、メグレは心の中で「いい加減にしろ!」と叫びたいくらいだった。

 

Je suis de service de nuit < être(ジュシュイ・ドゥセルヴィス・ドゥニュイ)私は夜勤です

 

toute la semaine(トゥトラスメーヌ)今週いっぱい

 

Toujours aussi exaspérant(トゥジュー・ゾッシ・エグザスペラン)いつも同じに苛立たしい

 

*était obligé de déployer avec lui < être(エテトブリジェ・ドゥデプロワィエ・アヴェクリュイ)彼に対して広げることを余儀なくされた(半過去形)

être obligé de ~を余儀なくされる、~しなければならない

 

des trésors de patience(デトレゾー・ドゥ・パシァンス)直訳では「忍耐の宝庫」⇒ 辞書には「限りない忍耐」=日本語では「堪忍袋」が当てはまるように思う。 

trésor は単数形では宝物、財宝。複数形では宝庫。

関連語句:à bout de patience(アブードゥ・パシァンス)我慢の限界

f:id:maigretparis:20191202091027j:plain

Crédit photo :  À bout de patience, espionnage de Serge Laforest

@booknode.com

 

*qu’il n’aurait pas eus < avoir, avoir(キルノーレパジュ)彼が持つことはなかった(条件法・現在形)文法メモ:avoir の過去分詞 eu に s がつくのは、que の前の複数形名詞 des trésors を説明するため。 

 

pour n’importe lequel de ses inspecteurs(プーナンポルト・ルケル・ドゥセ・ザンスペクトゥー)彼の配下の刑事たちの誰であろうとも



**事件の概容についてはこちらへ #66

https://maigretparis.web.fc2.com/enquetes/maig66gangster.html