フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

フランス語の慣用表現「すべての場所を持って⇒ まぎれもなく」

ー L’an dernier, j’ai remis, en billets de banque, cinq cent quatre-vingt-dix mille francs à Juliette… (---) 

ー Et cet argent se trouvait chez elle ?

ー J’ai tout lieu de le croire, puisqu’elle ne sortait plus et qu’elle n’aurait pas confié de telles sommes à sa nièce...

(©Georges Simenon : Cécile est morte; Chap.4 de 1ère Partie) 

 

「去年のことですが、私はジュリエットに紙幣で59万フランを渡したんです。」 (---) 

「それで、その金は彼女の家にあったのか?」

まぎれもなくそう思いますよ。なにしろ彼女はもはや外出しませんでしたし、こんな大金を姪に任せることもなかったでしょうし…」

(#41『セシルは死んだ』第1部・第4章)

 

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Crédit photo : Billet de Banque - 500 Fr (1942)

Franc français @Wikimedia commons

 

L’an dernier(ランデルニエ)去年

 

j’ai remis < avoir, remettre(ジェルミ)私は渡した(複合過去形)

 

en billets de banque(アンビエ・ドゥバンク)紙幣で

 

*cinq cent quatre-vingt-dix mille francs(サンサン・キャトルヴァンディ・ミルフラン)59万フラン(この事件は大戦直前の頃とされているので、貨幣価値は1960年のデノミ前の「旧フラン」と思われる。厳密には比較できないが、現在でも数百万円相当だろう。

 

Et cet argent se trouvait chez elle ? < se trouver(エセッタルジャン・ストルヴェ・シェゼル)それでその金は彼女の家にあったのか?(半過去形)

 

*J’ai tout lieu de le croire < avoir(ジェトゥリュー・ドゥクロワール)私はそれを信じるすべての場所を持っている⇒ まぎれもなくそう思います(慣用句)avoir tout lieu de ~

 

puisqu’elle ne sortait plus < sortir(ピュイスケル・ヌソルテプリュ)彼女がもはや外出しなかったのだから(半過去形)

 

qu’elle n’aurait pas confié < avoir, confier(ケルノーレパ・コンフィエ)彼女が託すことはなかっただろう(条件法)

 

de telles sommes à sa nièce(ドゥテルソム・アサニエス)彼女の姪にそれほどの大金を

 

*参考再出:(フランス語警察用語)ビスケットの缶に札束が

https://maigretparis.hatenablog.com/entry/18619240