フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

(フランス語警察用語)ビスケットの缶に札束が

Le journal déployé, le commissaire découvrit une boîte à biscuits, en fer-
blanc, avec encore la marque en rouge et jaune. Quand il l’ouvrit, ce fut pour
trouver des liasses de billets de cent francs.
ー Ce sont mes économies…
Maigret le regarda comme s’il n’entendait pas, s’assit devant l’établi pour
compter les liasses. Il y en avait quarante-huit.
(©Georges Simenon : L’ami d’enfance de Maigret; Chap.2)

新聞紙を剥ぐと、警視はビスケットの缶を見つけた。ブリキ製で、赤と黄色の商標がまだ付いていた。蓋を開けるとそこには百フラン紙幣の札束が入っていた。
「それは俺の貯えだよ。」
メグレは聞こえなかったように彼を見つめた。そして作業台の前に座って札束を数えた。48枚あった。
(#96『メグレの幼な友達』第2章)

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*メグレは戸棚の上に新聞紙で包まれたものを見つけ、椅子に乗ってそれを取りおろした。人が物を隠すのによく使う手は戸棚やタンスの上に乗せておくことで、捜索では真っ先にそこが注目される。

déployé < déployer(デプロヮイエ)広げる、誇示する(過去分詞)

découvrit  < découvrir(デクヴリ)発見する、見つける(単純過去形)

boîte à biscuits(ボヮトアビスキュイ)ビスケットの缶
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en fer-blanc(アンフェールブラン)ブリキ製の

marque(マルク)n.f. 商標、目印

ouvrit < ouvrir(ウヴリ)開ける(単純過去形)

liasses < liasse(リアス)n.f. 束、綴り

*billets de cent francs(ビェドゥ・サンフラン)百フラン紙幣
フランスでは1960年1月に貨幣のデノミが施行された。旧100フラン⇒新1フランとなった。1999年にユーロが導入される直前の1フランは約20円だったが、1960年の頃よりも価値が1/8以上下落していたという。(Wikipedia「フランス・フラン」を参照)
メグレのこの事件ではすでに新フラン(Nouveau Franc)の時代になっている。1フラン=¥160 と推定される。従って発見した札束の価値は、48 x 100 x
160 = 768,000 で、現代の価値感覚では150万円以上に相当すると思われる。

économies(エコノミー)n.f.pl. (複数形で)節約、倹約、貯え、貯金

comme s’il n’entendait pas < entendre(コム・シルナンタンデパ)聞こえなかったかのように(半過去形)

s’assit < s’asseoir(サッシ)座る(単純過去形)

établi(エタブリ)n.m. 作業台

compter(コンテ)v.t. 数える