フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

フランス語の慣用表現「ピン留めにして載せる⇒ 極端に誇張する」

 D’Alfred-le-Triste, dont il n’avait jamais eu à s’occuper personnellement, (---)
Le personnage était presque célèbre, et les journaux l’avaient monté en
épingle à cause de son pittoresque. (---) Toujours est-il qu’au lieu d’installer
des coffres-forts il s’était mis à les cambrioler.
(©Georges Simenon :Maigret et la Grande Perche; Chap.1er)

 むっつりアルフレッドについては、彼は事件の担当をしたことがまったくなかったが(---)その人物はほとんど有名といってもいいくらいだった。新聞各紙はその話題性ゆえに彼のことを極端に誇張して書いていた。 (---) いずれにせよ金庫を設置する仕事から中身を強奪する悪事に転じたのだった。
(#65『メグレと消えた死体』第1章; 原題は「メグレとのっぽの女」)

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*のっぽ女の夫アルフレッドは、金庫製造会社の腕利きの技術者だったが、生来の引っ込み思案な性格と癲癇症の不安から会社を辞め、金庫破りの泥棒になっていた。
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Crédit photo : Coffre-fort, Wikimedia commons

*Alfred-le-Triste(アルフレッド・ル・トリスト)綽名で「寂しいアルフレッド」だが、triste
には「陰気な、むっつりした、くすんだ」人物を評する意味もあるので《むっつりアルフレッド》にしてみた。

à s’occuper personnellement(アソキュペ・ペルソネルマン)みずから担当すること

personnage(ペルソナージュ)n.m. 有名人、著名人、人物、やつ、役割

presque célèbre(プレスク・セレーブル)ほとんど有名といってもいいくらい

les journaux(レジュルノー)n.m.pl. 新聞各紙

*monté en épingle < monter(モンテ・アンネパングル)ピン留めにして載せる⇒ 極端に誇張する(誇張は胡蝶と連想して覚えやすい)

参考再出:épingleを使った慣用句
フランス語の慣用表現「四本のピンで引っ張られて⇒ おめかしして」
tiré à quatre épingles

*à cause de son pittoresque(アコーズ・ドゥソン・ピトレスク)その話題性ゆえに  pittoresque n.m. 画趣、絵になる要素、話題性

*Toujours est-il que ~(トゥジューセティルク)それでもやはり~だ、いずれにせよ~だ(慣用成句)

au lieu de(オリュードゥ)~する代りに

installer des coffres-forts < coffre-fort(アンスタレ・デコフルフォー)金庫を設置する

il s’était mis à les cambrioler < se mettre à(イルセテミ・ザレ・カンブリオレ)彼はそこに泥棒に入ることをし始めた(半過去形)