フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

フランス語の慣用表現「鼻の中にグラスを入れる⇒ 酔っ払って」

  Il y avait une expression arrogante dans son regard, et il faisait penser à ces coqs de village qui, ayant quelques verres dans le nez un soir de noce ou d’enterrement, cherchent à provoquer une bagarre.

(©Georges Simenon : Maigret et la vieille dame; Chap.4) 

 

 その目つきには尊大な感じがあって、婚礼や葬式の夜に酔っ払ってケンカを吹っ掛けようとする村の男たちを思わせた。

(#59『メグレと老婦人』第4章)

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*フランス語では身体の一部を使った慣用表現がとても多い。鼻(nez)もその一つで、自分の鼻のことを言われるのを極端に嫌ったシラノ・ド・ベルジュラックを挑発するような「鼻づくし」の長ゼリフを書いたロスタンの戯曲は名作だと思う。

 

Il y avait une expression arrogante < avoir(イリヤヴェ・ユネクスプレッシォン・アロガント)尊大な感じがあった(半過去形)

 

dans son regard(ダンソンルギャー)彼の目つきには

 

et il faisait penser à ces coqs de village qui < faire(エ・イルフゼパンセ・アセコック・ドゥヴィラージュ)そして~をする村の男たちを思わせた(半過去形)

coq de village 村の力自慢の男(慣用語)

 

*ayant quelques verres dans le nez < avoir(アヤン・ケルクヴェー・ダンルネ)直訳では「鼻の中にいくつかのグラスがある」⇒ 酔っ払って(現在分詞)

avoir un verre dans le nez(慣用表現)酔っ払っている(ひょっとしたら言い間違えがそのまま定着したのかもしれない)

**逆に le nez dans le verre(グラスに鼻を入れる)は、ワインのテイスティングでよく見かける行為になる。

 

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Crédit photo : marcel magazine 100 @marcelmagazine.com 

 

un soir de noce ou d’enterrement(アンソワードゥノス・ウダンテールマン)婚礼か葬式の夜に

 

cherchent à provoquer une bagarre < chercher(シェルシュ・アプロヴォケ・ユヌバガール)ケンカを吹っ掛けようとする(現在形)