フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

フランス語の慣用表現「瓦(かわら)⇒ 災難」

ー Venez avec moi, madame, soupira-t-il.

 La tuile, évidemment.  Il l’avait sentie venir.

(©Georges Simenon : La Pipe de Maigret; Chap.1er) 

 

「奥さん、一緒に来てください。」とため息交じりに言った。

 明らかに災難だ。彼はそれが起きるのを感じていた。

(#47『メグレのパイプ』第1章)

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Venez avec moi, madame < venir(ヴネ・アヴェクモワ・マダム)奥さん、私と一緒に来てください(命令形)

 

soupira-t-il < soupirer(スーピラ・ティル)彼はため息をついた(単純過去形)

 

*La tuile, évidemment(ラチュイル・エヴィドマン)明らかに災難だ

tuile  n.f. 瓦、思いがけない災難(頭上に落ちる瓦の意味)

**往年の歴史スペクタクル映画「ベンハー」でも、ユダヤ人豪商の家の屋根から瓦が通りかかった兵士の列に落ちて、反逆罪で囚われの身になるという場面があった。そうした事案はたびたび起きたため、こうした用語が生まれたのだろう。

 

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Crédit photo : Tuile biscuits 

https://tuile.co.uk/

チュイルは別途「欧風瓦せんべい」というよりももっと繊細な焼き菓子の名称でもある。

 

Il l’avait sentie venir < avoir, sentir(イルラヴェ・サンティヴニール)彼はそれが来ると感じていた(大過去形)