フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

(フランス語の tu と vous)子供相手にはやはり tutoyer

Asseyez-vous, Justin, disait le commissaire en désignant une chaise.

ー Merci. Je ne suis pas fatigué.

ー Je vous ai fait venir pour que nous bavardions tous les deux, en amis, pendant quelques minutes. 

(---)

Assieds-toi

ー Je ne suis pas fatigué.

Tu l’as déjà dit, mais moi, cela me fatigue de te voir debout...

(©Georges Simenon : Le Témoignage de l’enfant de chœur; Chap.2) 

 

「ジュスタンさん、お座りください。」と警視は椅子を指しながら言った。

「いいです。僕は疲れてないので。」

「お呼びしたのは二人きりで友だちとしてちょっと雑談したかったからですよ。」

(---)

「座りなよ。」

「僕は疲れてないので。」

「そう言うけど、私は君が立っているのを見ると疲れるんだよ。」

(#50『聖歌隊の少年の証言』第2章)

 

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*メグレは夫人に頼んで自宅に少年を呼んでくるようにした。雑談をして事件の細部を検討したかったからで、最初はこれまでのように、丁寧な vous (vousvoyer) を使って話しかけたが、途中から急に tu (tutoyer) に切り替わった。やはり小中学生相手には(日本語の場合でもそうなるが)くだけた言い方が自然だ。

 

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Crédit d’image : L’écran sur Youtube

Téléfilm “Maigret et L’enfant de chœur” de “Les enquêtes du commissaire Maigret” 

© Antenne 2, 1988; ©INA - Institut National de l'Audiovisuel



Asseyez-vous < s’asseoir(アッセィエ・ヴ)お座りください(二人称複数・命令形)

 

disait le commissaire < dire(ディゼ・ルコミセール)警視は言った

 

en désignant une chaise < désigner(アンデシニャン・ユヌシェーズ)椅子を指しながら

 

*Merci(メルシ)ありがとうございます(日本語では曖昧な「いいです」のニュアンスに近い=フランス人のメルシには「OK」の場合と「NO」の場合が混じっている。メグレのDVD でもこれを聞いた相手が確かめるように “Merci-oui ou merci-non ?” と聞き返す場面があった。)

 

Je ne suis pas fatigué < être(ジュヌシュイパ・ファティゲ)私はくたびれていない

 

Je vous ai fait venir pour < avoir, faire(ジュヴゼフェ・ヴニール・プー)私はあなたに来てもらったのは(複合過去形)

 

*que nous bavardions tous les deux < bavarder(ク・ヌーバヴァルディオン・トゥレドゥ)二人で雑談したかったから(接続法現在形)活用形としては半過去形と同じだが半過去形は文法上説明がつかない

 

en amis, pendant quelques minutes(アンナミ・パンダンケルクミニュト)友だちとして数分間

 

Assieds-toi < s’asseoir(アッシ・トワ)座りな(命令形・二人称単数)

 

Tu l’as déjà dit < avoir, dire(チュラ・デジャディ)君はそれをすでに言った(複合過去形)

 

mais moi(メモワ)だが私は 

 

*cela me fatigue de te voir debout < fatiguer(スラムファティグ・ドゥトヴォワール・ドゥブー)君が立っているのを見るのは疲れる(現在形)直訳では「それが私を疲れさせる」