フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

フランス語の慣用表現「しわくちゃにする⇒ 悩ませる」(シフォネ)

Qu’est-ce qui vous chiffonne ?

ー Que ces gens-là n’ont pas encore tué…  Que ce n’est pas leur genre…

ー Il peut arriver, pourtant, comme c’était le cas hier soir…(---)

ー Je tâtonne.  Je suis la piste, bien entendu.

(©Georges Simenon : Maigret et le tueur; Chap.2) 

 

「何に悩んでいるのかね?」

「この連中はまだ人を殺していないんですよ。彼らはそのタイプじゃない。」

「それでも昨晩のように起こりうるんじゃないか。」(---)

「手探り状態ですよ。もちろん手がかりを追ってますけど。」

(#97『メグレと録音マニア』第2章)

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*予審判事への捜査状況の説明と打合せ。メグレは窃盗団の動向を見張ることにしたが、この空き巣狙いたちは殺人などの凶悪犯にはなりえないという心証があった。つまり殺人事件を起こした人間は他にいるのではという懸念だった。

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Crédit photo : Marchand de chiffons, estampe de 1850

"Chifffons, ferraille à vendre!"「ボロ布、鉄くずはありませんか」

Cris des marchands ambulants au XIXe siècle(19世紀の行商人たちの掛け声)

@L'Univers de Ninimalice, center.blog

http://mondesetmerveilles.centerblog.net/rub-estampes-.html

 

*Qu’est-ce qui vous chiffonne ? < chiffonner(ケスキ・ヴシフォンヌ)何があなたを悩ませるのか?⇒ 何に悩んでいるのか?

chiffonner v.t. しわくちゃにする、気がかりにさせる、悩ませる、屑拾いをする

chiffon n.f. ボロ布、雑巾、反故、紙くず、絹布地、pl. 女性の装身具、オシャレ用品

marchand de chiffons 屑物屋

**昨今日本で見聞きする「シフォンケーキ」chiffon cake はフランスではなく、米国発祥の菓子である。シフォンの別の意味の「絹布地」のような肌ざわりの感触から名づけられたようだ。フランス語で直訳すると「ボロ布ケーキ」「雑巾ケーキ」などと印象が悪く、gâteau chiffon とはあまり言っていないし、日本ほど店では売られていない。

 

Que ces gens-là n’ont pas encore tué < avoir, tuer(ク・セジャンラ・ノンパザンコー・チュエ) この連中はまだ人を殺していないということ(複合過去形)

 

Que ce n’est pas leur genre < être(ク・スネパ・ルージャンル)それ(殺人)が彼らのタイプではないということ

 

Il peut arriver, pourtant < pouvoir, arriver(イルプータリヴェ・プルタン)それでも起こりえます(現在形)il は非人称

 

comme c’était le cas hier soir < être(コム・セテルキャ・イエールスヮール)昨晩がその事例だったように(半過去形)

 

*Je tâtonne < tâtonner(ジュタトンヌ)私は手探り状態です

tâtonner v.t. 手探りする、暗中模索する、ためらう

 

*Je suis la piste < suivre(ジュシュイ・ラピスト)私は手がかりを追っている(現在形)suis は後を追う suivre の変化形で être > suis と同形なので紛らわしいので要注意。

 

bien entendu(ビァン・ナンタンデュ)もちろん、当然