フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

メグレ警視の食卓「鰯の缶詰」の夕食

 Drôle de dîner que celui qu’ils avaient fait en tête à tête, Moers et Maigret,
dans la salle du café.  Maigret s’était chargé du service. Il avait trouvé dans
l’office un saucisson, des boîtes de sardines, du fromage de Hollande.  Il
était descendu à la cave tirer du vin au tonneau, un vin épais, bleuâtre.
(©Georges Simenon : Maigret et son mort; Chap.4)

 ムルスとメグレが店の中で頭を突き合わせて取った夕食ほど奇妙な食事はなかった。メグレが食事の用意をした。彼は調理場からドライ・ソーセージ一本と鰯の缶詰とオランダのチーズを見つけた。地下倉に降りて樽からワインを汲んだ。濃厚で青みがかったワインだった。
(#55『メグレと殺人者たち』第4章)

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*メグレはやっと突き止めた被害者のカフェに居座ることに決め、鑑識のムルスを呼び出して指紋を採取させた。それが一段落すると、二人であり合わせの物で夕食を取る。通常 dîner(ディネ)n.m. というとたっぷりの食事(晩餐)にしか使わない単語のように思うが、簡素な夕食の場合でも使うようだ。

*Drôle de dîner que celui qu’ils avaient fait < avoir, faire(ドロルドゥディネ・クスリュイ・キルサヴェフェ) 彼らが取った夕食ほど奇妙な食事はなかった(大過去形)文頭に il n’y a rien de plus と補ってみるとわかりやすい。

*en tête à tête(アンテタテト)面と向かって、頭を突き合わせて
tête-à-tête と書く場合もある/恋人同士が差し向かいで見つめ合う場合など、つまり視線が大事なのだが、ここの場面では、二人の男が向かい合って座って、黙々と食べる様子なので「頭を突き合わせて」のほうが合っているように思う。

dans la salle du café(ダンラサル・デュカフェ)カフェの店内で

s’était chargé du service < se charger(セテシャルジェ・デュセルヴィス)食事の用意を引き受けた(半過去形)service n.m. 給仕

Il avait trouvé dans l’office < trouver(イラヴェ・トルヴェ・ダンロフィス)彼は調理場で見つけた  office n.f. 調理場、台所

*saucisson(ソーシソン)n.m. サラミ風のドライ・ソーセージ
調理して食べるソーセージは saucisse(ソーシス)n.f. になる。

boîtes de sardines(ボワト・ドゥ・サルディーヌ)いわしの缶詰(フランスではオイル漬けがほとんど)
イメージ 1

Crédit photo: La Sardine en boîte

**du fromage de Hollande(デュフロマージュ・ドゥ・オランド)オランダのチーズ / 単に hollande  n.m. だけでも総称的に「オランダチーズ」を指す
Hollande は単語として「有音のh」とされているので、xx d’Hollande とはならない。

Il était descendu à la cave(イレテ・デサンデュ・アラカーヴ)彼は地下倉に降りた(大過去形)

tirer du vin au tonneau(チレデュヴァン・オートノー)樽からワインを汲む

un vin épais(アンヴァンネペ)濃厚なワイン

bleuâtre(ブルアートル)adj. 青みがかった