フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

(メグレの日常)目の中に小さな炎が踊る

ー Elle a vu deux hommes entrer dans une maison. (---) C’est un petit café
qui fait le coin du quai et d’une rue.  Cela s’appelle Au Petit Albert.
 Maigret serrait fortement le tuyau de sa pipe entre ses dents et évitait de
regarder Mme Maigret par crainte de lui laisser voir la petite flamme qui
dansait dans ses yeux.
(©Georges Simenon : Maigret et son mort; Chap.3)

「彼女は2人の男が一軒の家に入っていくのを見たんです。(---) そこは河岸と通りが角になった小さなカフェで、店の名前は《小さいアルベールの店》です。」
 メグレは歯でパイプの管を強く噛みしめた。そして自分の目の中に小さな炎が踊っているのを見られはしないかと恐れて、夫人のほうを見るのを避けた。
(#55『メグレと殺人者たち』第3章)

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*メグレはふと指示を思いついて警視庁に電話するが、ちょうどそのとき、警視庁には黄色い車の目撃情報を話しに来訪した老女がいた。場所はパリ東部セーヌ川沿いのシャラントンだった。
イメージ 1

Crédit photo : Vue d’un café de la
rue de Charenton, Paris 12e
©Google street-view

現在のシャラントンの河岸沿いの道路や街区は再開発が進み、高層ビルが建ち、広い高速道路が走っている。往時のひなびた様相は皆無となってしまった。しいてその雰囲気を求めるなら、パリ12区の外れに当たるシャラントン通りの一角に残されている。

Elle a vu deux hommes entrer < voir(エラヴュ・ドゥゾムサントレ)彼女は二人の男が入るのを見た(複合過去形)

qui fait le coin du quai et d’une rue < faire(キフェルコヮン・デュケ・エデュヌリュ)河岸と一本の通りとで角になっている(現在形)

Cela s’appelle Au Petit Albert.< s’appeler(スラ・サペル・オープティタルベール)そこは~という名前です(現在形)

serrait fortement le tuyau de sa pipe < serrer(セレ・フォルトマン・ルチュヨー・ドゥサピプ)彼のパイプの管を強く噛んでいた(半過去形)

entre ses dents(アントル・セダン)彼の歯の間で

évitait de regarder Mme Maigret < éviter(エヴィテ・ドゥルギャルデ・マダムメグレ)夫人を見るのを避けた(半過去形)

par crainte de(パークラント・ドゥ)~の恐れから

lui laisser voir(リュイレッセ・ヴォワール)彼女に見させる、見るに任せる(現在形)

*la petite flamme qui dansait dans ses yeux < danser(ラプティトフラム・キダンセ・ダンセジュー)彼の目の中で踊っていた小さな炎(半過去形)
「目の中で小さな炎がメラメラと」という表現は、往年の欧米のTVアニメ(例えば「トムとジェリー」など)でドタバタの追跡劇が始まる直前の、やる気スイッチが入る場面でよく描かれていた。瞳の色が黒っぽくない欧米人のほうが炎のように見えやすかったからかもしれない。