フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

フランス語の慣用表現「足を砕く⇒ うんざりさせる」

ー Ça me casse les pieds d’arrêter un type comme lui et de l’envoyer en
tôle.  La dernière fois, quand on lui a flanqué cinq ans, j’avais presque envie
d’engueuler son défenseur, qui n’a pas su y faire.  C’est un “moindre”, cet
avocat-là !
(©Georges Simenon :Maigret et la Grande Perche; Chap.2)

「彼のような男を捕まえてムショ送りにするのはうんざりしますよ。この前、彼が5年の刑を食らったときは、うまく立ち回れなかった弁護人をほとんど怒鳴りつけてやりたかったくらいで。あの出来の悪い弁護士ときたら!」
(#65『メグレと消えた死体』第2章; 原題は「メグレとのっぽの女」)

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*Ça me casse les pieds de ~(サムカッスレピエ・ドゥ)~するのは私をうんざりさせる/ フランス語には手(main) や足(pied) に関する慣用的表現が沢山ある。
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casser les pieds à qn… ...をうんざりさせる、苛立たせる
pied には「足」のほかに「愉楽、快楽、楽しみ」の意味もあり、それをぶち壊すということからこの表現が由来したかもしれない。

*arrêter un type comme lui(アレテ・アンティプ・コムリュイ)彼のような男を捕まえる
type(ティプ)n.m. タイプ、類、典型、男、やつ

*envoyer en tôle(アンヴォワィエ・アン・トール)ムショ送りにする
tôle < taule  n.f. 刑務所、ムショ、部屋、住居
aller en taule (tôle) 刑務所に入る

La dernière fois(ラ・デルニエール・フォヮ)この前は、前回は

quand on lui a flanqué cinq ans < flanquer(カントン・リュイ・アフランケ・サンカン)彼に5年の刑を食らわせたとき

j’avais presque envie de(ジャヴェ・プレスク・アンヴィドゥ)ほとんど~したいと思っていた(半過去形)

engueuler(アングーレ)v.t. 怒鳴りつける、きつく叱る

son défenseur(ソン・デファンスー)彼の弁護人

*qui n’a pas su y faire(キナパ・シュイフェール)うまく立ち回れなかった
savoir y faireサヴォワール・イ・フェール)抜け目なくふるまう、うまく立ち回る(慣用句)
名詞形:savoir-faire(サヴォワールフェール)n.m. 腕前、手腕、技量(英語のノウハウ know-how に該当する)

moindre(モヮンドル)adj. より小さい、出来の悪い、他より劣る


**事件の概容についてはこちらへ #65