フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

フランス語の慣用表現「指先で知っている⇒ 熟知している」

 Chez Boissier, on était, de part et d’autre, gens de métier. La lutte était une
lutte de spécialistes.  Il ne s’agissait pas de faire de la psychologie, mais de
connaître sur le bout des doigts les manies et les tics de chacun.
(©Georges Simenon :Maigret et la Grande Perche; Chap.2)

 ボワシエ刑事の部署ではどちらの側も職人肌の人間だった。取り調べは専門家同士のせめぎ合いだった。心理分析をするという訳ではなく、むしろ各人のこだわりや癖を熟知していることが肝要だった。
(#65『メグレと消えた死体』第2章; 原題は「メグレとのっぽの女」)

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*ボワシエ刑事は別の部署、つまり殺人事件などの凶悪犯罪を取り扱うメグレの部署=刑事警察部(P.J.) ではなく、宝石泥棒や窃盗などを専門に扱うところだった。相手にする犯罪者たちもその道のプロと言われる常習者が多い。

de part et d’autre(ドゥパー・テ・ドートル)両側で、互いに(成句)

gens de métier(ジャンドゥ・メチエ)職人気質の人々

lutte(リュット)n.f. 抗争、戦い

*Il ne s’agissait pas de(イルヌ・サジッセ・パドゥ)~を意味するのではなかった(半過去形)il は非人称
faire de la psychologie(フェール・ドゥラ・プシコロジー)心理分析をする

connaître sur le bout des doigts(コネートル・シュールブーデドワ)直訳では「指先で知る」だが、「~を熟知している」という成句になる。手先の感覚だけで、目をつぶっていてもわかるという熟練工の技などにも当てはまる。
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Crédit photo : Étude de mains,
Edgar Degas (1834-1917)
Paris, musée d'Orsay
(C) RMN-Grand Palais


les manies et les tics(レ・マニー・ゼレ・チック)こだわりと癖