フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

フランス語の慣用表現「惨めさを探す⇒ 嫌がらせをする」

ー Si seulement vous pouviez leur dire de laisser mon fils tranquille.
ー A qui ?
ー Aux autres flics. A ceux d’ici. Ils n’arrêtent pas de lui chercher des misères.
ー Qu’est-ce qu’il fait ?
ー Il travaille.
ー A quoi ?
ー Est-ce que je sais ?
(©Georges Simenon :Maigret et la Grande Perche; Chap.4)

「せめてウチの息子をそっとしておくように言ってもらえたらいいのに。」
「誰に?」
「他の刑事たちよ。この辺のね。嫌がらせをやめないんだから。」
「彼は何をやってるんだい?」
「働いてるのよ。」
「何で?」
「知ってるわけないでしょ。」
(#65『メグレと消えた死体』第4章; 原題は「メグレとのっぽの女」)

∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞

*家政婦が住んでいたのはヌィイ市の西隣のピュトー市(Puteaux)だった。セーヌ川にかかる大きな橋を渡っていく。原作でも populeux(ポピュルー:立てこんだ)とあるように、お高くとまった感じのヌィイに比べれば、庶民的な、親しみやすい地区である。現在はかなり整備されている。
イメージ 1

Crédit photo : Vue de la ville de
Puteaux, @Google street-view

*Si seulement vous pouviez <
pouvoir(シスールマン・ヴプヴィエ)せめてあなたが~できてたらいいのに(半過去形=現実にないことへの願望)

laisser mon fils tranquille(レッセ・モンフィス・トランキル)私の息子をそっとしておく

A ceux d’ici(アスー・ディシ)この辺の彼ら(刑事)に.  

Ils n’arrêtent pas de < arrêter(イルナレトパドゥ)彼らは~するのを止めない

*chercher des misères(シェルシェ・デ・ミゼール)直訳で「みじめさを探す」⇒ 嫌がらせをする (faire des misères à) もほぼ同じ意味。
misères  n.f.pl. 悲惨な事、不幸な出来事、不快な事、病苦

*Est-ce que je sais ?(エスク・ジュセ)直訳で「私が知っているの?」⇒「知ってるわけないでしょ。」


**事件の概容についてはこちらへ #65