フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

(メグレの特性)親の気持

  Enfin, il tira un portefeuille usé de sa poche, y prit plusieurs billets de cent francs.(---)

ー Je suppose qu’il est encore sans argent… (---)

  Une pause. Une question.

ー Vous avez des enfants, monsieur le commissaire ?

ー Malheureusement pas.

Il ne faut pas qu’il se sente abandonné....

(©Georges Simenon : Le Voleur de Maigret; Chap.6) 

 

 最後に彼はポケットから使い古した財布を取り出し、そこから百フラン札を何枚か取った。(---)

「相変わらず金がないと思うんですよ。」 (---)

 ちょっと間があった。問いかけがあった。

「警視さん、お子さんはいますか?」

「残念ながらいません。」

見捨てられたと思わせたくないんです。」

(#93『メグレの財布を掏った男』第6章)(メグレの泥棒)

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*被害者の父親の来訪の後、今度はその夫リケンの父親がやって来た。南仏の国境の町からパリまで車を走らせたという。メグレはしばしば「お子さんはいますか?」ときかれるが、常に「いない」と答える。本当は女の子が一人いたのだが、幼い時に亡くしていたのだ。作者のシムノンは作家としては大成功したが、晩年になって娘が自殺するという悲劇を経験する。それはメグレ作品の後のことだった。どんな人間にとっても子供に対する親としての気持は変わらない。最後の「見捨てられたと思わせたくない」の一文には重みがある。

 

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Crédit d’image : L’écran sur Youtube

Téléfilm “Le Voleur de Maigret” de “Les enquêtes du commissaire Maigret” 

© Antenne 2, 1981; ©INA - Institut National de l'Audiovisuel

 

Enfin, il tira un portefeuille usé < tirer(アンファン・イルチラ・アンポートフイユ・ユゼ)最後に彼は使い古した財布を取り出した(単純過去形)

 

de sa poche(ドゥサポシュ) ポケットから

 

y prit plusieurs billets de cent francs < prendre(イプリ・プリュジュービエ・ドゥサンフラン)そこから何枚かの百フラン札を取った(単純過去形)

 

Je suppose que < supposer(ジュシュポーズ・ク)私は~だと推測する(現在形)

 

il est encore sans argent < être(イレタンコー・サンザルジャン)彼は相変わらず金がない(現在形)

 

Une pause. Une question(ユヌポーズ・ユヌケスチォン)ちょっと間があった。一つの質問。

 

Vous avez des enfants < avoir(ヴザヴェ・デザンファン)あなたは子供がいますか?

 

monsieur le commissaire(ムッシュ・ルコミセール)警視殿

 

Malheureusement pas(マルルーズマン・パ)残念ながらいません

 

Il ne faut pas que < falloir(イルヌフォーパ・ク)~しない必要がある、~してはいけない

 

il se sente abandonné < se sentir(イルスサント・アバンドネ)彼が見捨てられたと感じる(接続法・現在形)