フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

(フランス語警察用語)責任の有無

  Cette dose-là, c’était Gisèle Marton, en changeant la place des tasses sur le plateau, qui l’avait eue, et elle n’en avait été qu’incommodée. (---)

  Il existe, entre la responsabilité et l’irresponsabilité, une zone imprécise, un domaine d’ombres où il est dangereux de s’aventurer.

(©Georges Simenon : Les Scrupules de Maigret; Chap.8) 

 

 お盆の上でカップを交換することによって、ジゼル・マルトンはその少ない分量を飲み、気持が悪くなるだけで済んだ。 (---)

 責任があるのかないのかということについては、漠然とした領域があり、そこに踏み込みには危険な分野なのだ。

(#79『メグレと火曜の朝の訪問者』第8章)(メグレの心配事)

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*3人目は被害者の妻ジゼルである。彼女は漠然とした予感から、いつもやるように、こっそりとカップの位置を交換しただけだった。その夜彼女は胃の不快感をえて嘔吐した。代わりに夫を死に追いやることになった。三重の悲劇にメグレはやるせなさを覚えるしかなかった。(完)

 

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Crédit photo : L’écran sur Youtube 

Téléfilm #46 “Les Scrupules de Maigret” avec Bruno Crémer

2002  © Dune / France2  

 

Cette dose-là(セットドーズラ)その分量

 

en changeant la place des tasses sur le plateau < changer(アンシャンジャン・ラプラスデタス・シュール・プラトー)お盆の上のカップの位置を交換しながら(現在分詞)

 

qui l’avait eue < avoir, avoir(キラヴェウ)それを飲んだ(大過去形)

 

et elle n’en avait été qu’incommodée < avoir, être(エ・エルナンナヴェテテ・カンコモデ) そして彼女は気持悪くなっただけだった(大過去形)

 

*entre la responsabilité et l’irresponsabilité (アントル・ラレスポンサビリテ・エ・リレスポンサビリテ)責任と無責任の間には(日本語では「無責任」の意味は「責任を顧みない」などの非難のそしりを免れ得ない態度を示すので、「責任が全くない」状態には使わないのが面白い。)

 

Il existe une zone imprécise < exister(イレグジスト・ユヌゾーン・アンプレシズ)漠然とした領域がある(現在形)il は非人称

 

un domaine d’ombres où(アンドメーヌ・ドンブル・ウ)~という影の部分

 

il est dangereux de s’aventurer < être(イレダンジュルー・ドゥサヴァンチュレ)踏み込むには危険な