フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

(メグレ季節描写)諸聖人の日(トゥッサン)の頃の葬式

ー C’est terrible, n’est-ce pas ? dit-elle. (---) Cette musique… Et cette odeur de chrysanthèmes… (---)

  Il faisait froid.  Un temps de Toussaint. Maigret et Nine n’avaient rien à faire dans ce quartier de Saint-Philippe-du-Roule. 

(©Georges Simenon : L’Ombre chinoise; Chap.9) 

 

「すごくありませんか?」と彼女は言った。 (---) 「この音楽、それにこの菊の花の匂い。」 (---) 

 寒かった。諸聖人の日の時節だ。メグレとニーヌはこのサン=フィリップ=デュ=ルール地区では何もすることがなかった。

(#13『メグレと死者の影』第9章)

∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞

 

*被害者クシェの葬儀が自宅に近い教会で行われ、メグレは参列した。後からニーヌもやってきた。

f:id:maigretparis:20201027144712j:plain

Crédit d’image : Vue de l’église de Saint-Philippe-du-Roule, Paris 8e

@ google street-view

 

C’est terrible, n’est-ce pas ?(セテリーブル・ネスパ)すごくありませんか?

 

dit-elle < dire(ディテル)彼女は言った(単純過去形←活用形は現在形と同じだが、小説では)

 

Cette musique(セット・ミュジーク)この音楽

 

Et cette odeur de chrysanthèmes(エ・セットドゥー・ドゥ・クリザンテム)それにこの菊の花の匂い

 

Il faisait froid < faire(イルフゼ・フロワ)寒かった(半過去形)

 

*Un temps de Toussaint(アンタン・ドゥ・トゥッサン)11月1日、諸聖人の日の頃(日本のお盆やお彼岸と同じように、フランスでは冬を前に菊の花で墓参をする習慣がある。時候を示す表現=季語のようなもの、として用いられる。)

 

n’avaient rien à faire < avoir(ナヴェ・リァンナフェール)何もすることがなかった(半過去形)

 

dans ce quartier de(ダンスカルチエ・ドゥ)この地域で

 

*Saint-Philippe-du-Roule(サン=フィリップ=デュ=ルール)シャンゼリゼ大通りから北側に入ったサン=トノレ通りにある由緒ある教会。この地域の名前にもなっている。