フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

フランス語の慣用表現「言い寄る」

  Eveline n’attendait pas qu’un homme lui fasse la cour.  C’était elle qui attaquait. (---)  Son mari, à cette époque-là, déjà amoureux d’Antoinette, devait la délaisser. Il lui était arrivé d’aller le soir en consultation alors qu’Eveline et Négrel restaient en tête à tête.

(©Georges Simenon : Maigret s’amuse; Chap.6) 

 

 エヴリーヌは男が言い寄ってくるのを待たなかった。攻めたのは彼女のほうだった。(---)  その時分にはすでにアントワネットを愛していた夫は、彼女をなおざりにしていたに違いなかった。エヴリーヌとネグレルが二人きりで残るというのに彼は夜往診に出かけることがあったのだ。

(#77『メグレ推理を楽しむ』第6章)

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*事件によっては被害者のほうの行状が容赦なく暴かれる場合も少なくない。普通はまず第一に死者への尊厳に配慮することを考えるが、事件の背景として被害者が何をしていたのかを明らかにしなければ解決できないのも一理ある。

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Crédit d'image : L'Opportunité fait le voleur (détail), aquarelle de Maurice Leloir (1853-1940) (C) The Metropolitan Museum of Art, Dist. RMN-Grand Palais / image of the MMA

 

n’attendait pas que < attendre(ナタンデパ・ク)~するのを待たなかった(半過去形)

 

*un homme lui fasse la cour < faire(アンノム・リュイファス・ラクー)男が彼女に言い寄る(接続法・現在形)

faire la cour 直訳では「宮廷をする」だが、語源としては「宮廷の一員としてある人を追従する」意味から、女性に対して誘惑することに変わったようだ。

cour n.f. 中庭、宮廷、取り巻き、裁判所

 

C’était elle qui attaquait < être, attaquer(セテテル・キアタケ)攻めたのは彼女の方だった(半過去形) 

 

à cette époque-là(アセットエポクラ)その時分には

 

déjà amoureux de(デジャアムルー・ドゥ)すでに~を愛していた

 

Son mari devait la délaisser < devoir(ソンマリ・ドゥヴェ・ラデレッセ)彼女の夫は彼女をなおざりにしていたに違いない(半過去形) 

 

Il lui était arrivé de < être, arriver(イルリュイ・エテタリヴェ・ドゥ)彼には~することがあった(半過去形)文頭の il は非人称

 

aller le soir en consultation(アレ・ルスワー・アンコンシュルタシォン)夜往診に出かける

 

alors que(アローク)~であるのにもかかわらず

 

restaient en tête à tête < rester(レステ・アンテタテト)二人で差し向かいで残った(半過去形)



**事件の概容についてはこちらへ #77

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