フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

フランス語の慣用表現「心の上に大きな物を持つ⇒ 胸がつかえる」

  Quand nous avons interrogé une des deux autres, son mari était présent et l’a empêchée de nous répondre. (---)

  Sa femme s’est tue, à regret, croyons-nous, car elle semblait en avoir gros sur le cœur.

(©Georges Simenon : Maigret s’amuse; Chap.6) 

 

 我々が他の二人のうちの一方に問いかけたとき、その夫が出てきて彼女が答えるのをさえぎったのだ。(---)

 彼女は黙ったが、我々には残念そうに思えた。というのも胸がつかえているように思われたからだ。

(#77『メグレ推理を楽しむ』第6章)

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*メグレが個人的に思っていたように、新聞記者たちは被害者の故郷のコンカルノーに赴き、彼女の友人たちに過去の行状について聞き出そうとしていた。

 

Quand nous avons interrogé < avoir, interroger(カンヌザヴォン・アンテロジェ)我々が問いかけたとき(複合過去形)

 

une des deux autres(ユヌ・デドゥゾートル)他の二人のうちの一方に

 

son mari était présent < être(ソンマリ・エテプレザン)彼女の夫が出てきた(半過去形)

 

*et l’a empêchée de nous répondre < avoir, empêcher(エラ・アンペシェ・ドゥヌーレポンドル)そして彼女が我々に答えるのをさえぎった(複合過去形)彼女 la が動詞 a の前にあるので、過去分詞 empêché に e がついた。

 

*Sa femme s’est tue < se taire(サファム・セチュ)彼の妻は黙った(複合過去形)代名動詞 se taire「黙る」の複合過去形は se + être + 過去分詞 なので、s’est tu になるが、主語が女性なので過去分詞に e がつく。

 

à regret(アルグレ)惜しそうに、残念そうに

 

croyons-nous < croire(クロワィヨンヌー)我々は思う(倒置形)

 

car elle semblait < sembler(キャーエルサンブレ)なぜなら彼女は~に見えた(半過去形)

 

en avoir gros sur le cœur(アンナヴォワール・グロ・シュールクー)直訳では「心の上に大きな物を持つ」(慣用表現)悲しくて胸が一杯になる、多くの悩みを抱えている、胸がつかえる、など日本語では「胸」を使った表現になる。

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Crédit photo : Gros sur le coeur, Carène Ponte

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