フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

フランス語の慣用表現「四つの目のあいだで⇒ 面と向かって」

ー Elle est rentrée hier à Paris.  Elle crâne toujours.  Avant deux mois, j’espère la tenir dans mon bureau, entre quatre z’yeux.

(©Georges Simenon : Le revolver de Maigret; Chap.9) 

 

「彼女は昨日パリに帰ってきた。ずっと強気でいるよ。ふた月になる前に私の部屋で面と向かって問い詰めたいものだ。」

(#67『メグレの拳銃』第9章)

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*この事件では、容疑者のラグランジュは精神に異常をきたし、まともな応答ができなくなっていた。被害者をゆすっていた大元のジャンヌはしらを切り続けている。代議士は自分が持っていた拳銃で撃たれて死んだのだが、それ以上踏み込んだ捜査は困難だった。(完)

 

Elle est rentrée hier à Paris < être, rentrer(エレラントレ・イエー・アパリ)彼女は昨日パリに帰ってきた(複合過去形)

 

Elle crâne toujours < crâner(エルクラヌ・トゥジュー)彼女はずっと強がりを言っている(現在形)

 

Avant deux mois(アヴァン・ドゥモワ)二カ月になる前に

 

j’espère la tenir dans mon bureau < espérer(ジェスペール・ラトゥニール・ダンモンビュロ)彼女を私の部屋で引き留めたいと思う(現在形)

 

*entre quatre z’yeux(アントル・キャトルジュー)面と向かって、差し向かいで

 直訳で「四つの目のあいだで」となるが、二人が対面すれば目の数は確かに四つになる。似たような表現は、vis-à-vis(ヴィザヴィ)や face à face(ファサファス)など少なくない。日本人にとっては「四つ目」quatre yeux よりも言いやすいが、フランス人もやや簡略化した entre quat’-z-yeux(アントル・キャッジュー)という言い方がある。フランス語では「膝を突き合わせて」とは言わない。昔の鈍行列車の対面型ボックス席は狭くて膝がぶつかりそうになって窮屈だったことを思い出す。

 

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*参考Youtube

Debussy - Entre Quatre-z-Yeux (Documentary with Daniel Barenboim, 1999)

(Documentary with Daniel Barenboim, 1999)

https://www.youtube.com/watch?v=EZ5h10GlT04

ドビュッシー前奏曲集第1巻と面と向かって、という趣旨かも。