フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

フランス語の慣用表現「なぜ悪魔⇒ 一体どうして?」

  Il avait soif.  Il se dirigea vers la porte vitrée, qu’il essaya en vain d’ouvrir.

ー À onze heures et demie, sir !

  Il se rembrunit. (---) Pourquoi diable n’avait-il pas le droit de boire un verre avant onze heures et demie ?

(©Georges Simenon : Le revolver de Maigret; Chap.6) 

 

 彼は喉が渇いていた。ガラス張りのドアのほうに向かったが、開けようとしても無駄だった。

「お客様、11時半からです。」

 彼は顔を曇らせた。一体全体どうして11時半よりも前に一杯やる権利がないというのだろうか?

(#67『メグレの拳銃』第6章)

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*結果的にロンドン警視庁は、メグレの依頼した件を遺漏なくフォローしてくれていた。重要参考人のジャンヌが泊っているサヴォイ・ホテルに刑事を張り込ませ、メグレの部屋も押さえていた。ロンドンではホテルのバーは昼前ぎりぎりにしかオープンしないのでメグレは腹を立てる。

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Crédit photo : Beaufort Bar at the Savoy Hotel @Drink Up London

https://drinkup.london/bars/2575/beaufort-bar-at-the-savoy/

Il avait soif < avoir(イラヴェ・スワフ)彼は喉が渇いていた(半過去形)

 

Il se dirigea vers la porte vitrée < se diriger(イルスディリジャ・ヴェーラポルト・ヴィトレ)彼はガラス張りのドアのほうに向かった(単純過去形)

 

*qu’il essaya en vain d’ouvrir < essayer(キルエッセィヤ・アンヴァン・ドゥヴリール)彼は開けようとしたが無駄だった(単純過去形)

 

À onze heures et demie(ア・オンズゥー・エドゥミ)11時半に

 

Il se rembrunit. < se rembrunir(イルス・ランブリュニ)彼は顔を曇らせた(単純過去形)あまり使われない動詞=文語的

 

*Pourquoi diable(プルコワ・ディアブル)一体全体どうして(diable は強調語として入った。日本語でも同じような悪態表現になる。「どこの馬の骨が」など。)

 

*n’avait-il pas le droit de boire un verre < avoir(ナヴェティルパ・ルドロワ・ドゥボワール・アンヴェール)一杯やる権利がないのか(半過去形=時制の統一で:和訳の場合は現在形のままでいいと思う)

 

avant onze heures et demie(アヴァン・オンズゥー・エドゥミ)11時半よりも前に