ー Vous ne pensez pas que nous pourrions prendre un verre? (---)
Il fit la commande, leva son verre, qu’il tint un moment devant lui. Maigret le regardait, toujours bourru,(---) et c’est d’un air mi-figue mi-raisin qu’il prononça :
ー Au Gai-Paris, comme vous dites !
(©Georges Simenon : Maigret, Lognon et les gangsters; Chap.9)
「一杯やることができたらと思いませんか?」 (---)
彼は注文して、自分のグラスを持ち、彼の前でちょっと待った。メグレはまだ不愛想な様子で彼を見ていたが、(---)それからどっちつかずの気分で口を開いた。
「あなた方が言ってるように、花の都パリに乾杯!」
(#66『メグレと生死不明の男』第9章)
∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞
*この一件はもともと米国内の事件が起点だったので、メグレのところでは解決しようのないものとなった。ハリーの居場所を割り出して説明を聞いたが、余りしっくりしなかった。しかしハリーの申し出でウィスキーを一杯二杯と一緒に飲むことになり、最後は互いに打ち解けることができた。
Vous ne pensez pas que < penser(ヴヌパンセパ・ク)~と思いませんか?
*nous pourrions prendre un verre < pouvoir(ヌプーリオン・プランドル・アンヴェール)私たちが一杯やることができたら(条件法・現在形)
**この言葉は米国人のフランス語である。文法的には間違っていないが馬鹿丁寧過ぎるようだ。同じように日本人も外国語としてフランス語を使うので、「ちょっと一杯いかがです?」J’espère que nous prendrons un verre ? と言っても、まだちょっと変な言い方だなと思われるかもしれない。言葉は奥が深いものだ。
Il fit la commande < faire(イルフィ・ラコマンド)彼は注文した(単純過去形)
leva son verre < lever(ルヴァ・ソンヴェール)自分のグラスを持ち上げた(単純過去形)
qu’il tint un moment < tenir(キルタン・タンモマン)ちょっとそのままでいた(単純過去形)
devant lui(ドゥヴァンリュイ)彼の前で
regardait, toujours bourru < regarder(ルギャルデ・トゥジュー・ブーリュ)不愛想な顔をしたまま見つめていた(半過去形)
*c’est d’un air mi-figue mi-raisin(セダネール・ミフィグ・ミレザン) どっちつかずの気持で(慣用表現)いちじく半分、ぶどう半分=どっちつかず
フランス語で「干し葡萄」は raisin sec になる
Crédit photo : Confiture artisanale mi-figues mi-raisins
@locavor.fr
https://locavor.fr/produit/75017-confiture-artisanale-mi-figues-mi-raisins
qu’il prononça < prononcer(キルプロノンサ)口を開いた(単純過去形)
*Au Gai-Paris(オーゲパリ)花の都パリに乾杯
**「憧れのパリ」を表現する言葉は各国によって異なる。日本人は「花の都パリ」とよく言うが、英米人は「歓楽のパリ」(Gay Paris:英) という表現を今でもしている。これはフレンチ・カンカンに代表されるオッフェンバックの楽曲を再構成したパレエ「パリの歓び」(La Gaîté Parisienne) がきっかけになっているかもしれない。
Crédit photo : L’écran sur Youtube
Gay Parisian - La Gaîté Parisienne - Ballet Russe de Monte Carlo 1941
https://www.youtube.com/watch?v=W1jaWvIfa68
comme vous dites < dire(コム・ヴディト)あなた(方)が言うように