フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

(メグレと印象的な女性たち)豪腕実業家の無気力な妻

(---) enfin la porte livra passage à une femme en robe d’intérieur qui, avec ses
yeux sans expression, son visage bouffi et blême sous des cheveux d’un
noir d’encre lui fit l’effet d’une apparition.(---)
 Le regard de la femme, en face de lui, était las mais résigné, sans tristesse,
et elle paraissait à cent lieues des réalités de la vie.
(©Georges Simenon : Un échec de Maigret; Chap.2)

(---) やっと扉が開いて部屋着姿の女性が入ってきた。最初の印象では、表情のない眼差しで、黒インクのような髪の下の顔は青白くむくんでいた。(---)
 面と向かった女性の目つきは疲れたものだったが、寂しさのないむしろ諦めの様子で、生活の現実からは遠く離れているように見えた。
(#76『メグレの失態』第2章)

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*メグレの事件では、人からうらやまれるほど豪壮な屋敷に住む妻が夫とは何年も冷え切った関係となっていて、精神的にすさんだ日々を送っているという設定が多い。大抵の場合にはアルコール依存症に陥っている。

*enfin la porte livra passage à ~ < livrer(アンファン・ラポルト・リヴラパサージュ・ア)最後に扉が~に通行を許した⇒ やっと扉が開いて~が入ってきた(単純過去形:擬人法)

en robe d’intérieur(アンローブ・ダンテリウー)部屋着姿で

avec ses yeux sans expression(アヴェク・セジュー・サンゼクスプレシォン)表情のない眼差しで

son visage bouffi et blême(ソンヴィザージュ・ブフィ・エ・ブレーム)顔は青白くむくんでいた

sous des cheveux d’un noir d’encre(スーデシュヴー・ダンノワールダンクル)黒いインクのような髪の下の

*qui lui fit l’effet d’une apparition < faire(キリュイフィ・レフェ・デュヌ・アパリシォン)彼に出現の効果を示した⇒ 彼が感じた最初の印象では
faire une apparition  現れる、姿を見せる
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Crédit photo : L’écran d’Youtube
du Téléfilm d’ “Un échec de Maigret”
© Dune/France2
@macri rossi

en face de lui(アンファス・ドゥリュイ)彼と面と向かった

las mais résigné(ラ・メレジニェ)疲れ切っていたが、あきらめの

sans tristesse(サン・トリステス)寂しさのない

*paraissait à cent lieues des réalités de la vie < paraître(パレッセ・タサンュー・デレアリテ・ドゥラヴィ)人生の現実からは百里離れたように見えた
lieue(リュー)n.f.  里(昔の距離の単位で約4km:日本の昔の一里と似ている)
être à cent lieues de ~ など思いもよらない、~どころではない