フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

フランス語の慣用表現「椅子の棒の生活⇒ ふしだらな生活」

ー Avez-vous entendu dire que votre père menait ce qu’on appelait en ce
temps-là une vie de bâton de chaise ?
ー Il sortait beaucoup.
ー Il dépensait de grosses sommes ?
ー Je crois.
ー Votre mère lui faisait des scènes ?
ー Nous ne sommes pas des gens à faire des scènes.
(©Georges Simenon :Maigret et la Grande Perche; Chap.7)

「あなたのお父さんがその当時、いわゆる放埓な生活を送っていたという話を聞いたことがありますか?」
「しじゅう外出していました。」
「お金を沢山使っていたでしょう?」
「そう思います。」
「お母さんはたびたび口喧嘩をしてましたか?」
「私たちは口喧嘩をするような人間ではありません。」
(#65『メグレと消えた死体』第7章; 原題は「メグレとのっぽの女」)

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*Avez-vous entendu dire que < entendre(アヴェヴ・ザンタンデュ・ディール・ク)あなたは~という話を聞いたか?(複合過去形)
entendre dire ~ と言われているのを聞く、~という話を聞く(慣用句)

*votre père menait ce qu’on appelait en ce temps-là une vie de bâton de
chaise(ヴォートルペール・ムネ・スコンナプレ・アンスタンラ・ユヌヴィ・ドゥバトンドゥシェーズ)あなたのお父さんはその当時、いわゆる放埓な生活を送っていた(半過去形)
ce qu’on appelait < appeler(スコンナプレ)人がそう呼んだ(半過去形)
en ce temps-là(アンスタンラ)その当時
**mener une vie de bâton de chaise(ムネ・ユヌヴィ・ドゥバトンドゥシェーズ)ふしだらな生活を送る、放埓な生活を送る
ここでの chaise は椅子ではなく、古い時代に轎(かご)と呼ばれた箱型の乗物のことで、2本の長い棒をかけて前後の担ぎ手が運んだものとされる。(画像参照)
イメージ 1

その棒が「放埓な生活」とどういう関係があるのかはまだ不明。(おそらく担ぎ棒であちらこちら動き回ることからかも?)

Crédit photo : Jacques Faizant -
La vie de bâton de chaise
Avril 1984 - avril 1986
Sélection de dessins parus dans
Le Point © Le Point 1987 Faizant
bedetheque.com

Il sortait beaucoup < sortir(イルソルテ・ボクー)彼はしじゅう外出していた(半過去形)

*Il dépensait de grosses sommes < dépenser(イルデパンセ・ドゥグロスソム)彼は大きな額のお金を使っていた(半過去形)de は複数形冠詞 des の変形したもの

*Votre mère lui faisait des scènes ? < faire(ヴォートルメール・リュイフゼ・デセーヌ)あなたのお母さんは彼とたびたび口喧嘩をしましたか?
*Nous ne sommes pas des gens à faire des scènes.(ヌヌソムパ・デジャン・ザフェールデセーヌ)私たちは口喧嘩をするような人間ではない
**faire une scène(慣用句)喧嘩をする、大騒ぎをする 
scène n.f. 場面、情景、舞台(激しい口論などは異様な場面になるのでこの表現になったものと思われる)


**事件の概容についてはこちらへ #65