フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

フランス語の慣用表現「ガス灯にぶつかる⇒ 困難に出くわす」

Il travaille seul, sans jamais s’énerver.  Il ne boit pas, ne parle pas, ne va pas
jouer les durs dans les bistrots. (---) Or, chaque fois qu’il se décide, il tombe
sur un bec, ou bien il ramasse des haricots.
(©Georges Simenon :Maigret et la Grande Perche; Chap.2)

 彼はひとりで仕事をする。決して気をせかせることはない。彼は飲まない、しゃべらない、居酒屋で賭け事をしようともしない。 (---) ところが彼がやろうと決心するたびに困難に出くわすか、あるいはほんのわずかな獲物しかかき集められないのだ。
(#65『メグレと消えた死体』第2章; 原題は「メグレとのっぽの女」)

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Il travaille seul < travailler(イル・トラヴァーユ・スール) 彼はひとりで仕事をする

sans jamais s’énerver(サンジャメ・セネルヴェ)いらいらすることは決してない

Il ne boit pas < boire(イルヌボヮパ)彼は飲まない

ne parle pas < parler(ヌパルルパ)しゃべらない

jouer les durs(ジュエ・レデュール)トランプで賭け事をする(?)

Or(オー)conj. ところで、さて、ところが

chaque fois que(シャクフォヮ・ク)~のたびに

il se décide < se décider(イルスデシド) 自分で決心する

*tombe sur un bec(トンブ・シューアンベック)失敗する、予期せぬ障害に出くわす(元々は tomber sur un bec de gaz で「ガス灯の支柱にぶつかる」だが、ガス灯は現在では存在しないので de gaz が省略されるようになったようだ)また不特定の sur un bec という不定冠詞を使うので sur le bec ではない。
イメージ 1

bec  n.m. くちばし、人の口や鼻、先端、点火口、バーナー、ガソリンの給油器口

Crédit photo : affiche "Le Bec de gaz", un
film de Jean Cocteau / Café Creed Invisibles,
Affiches de films inachevés
参考再出:フランス語の慣用表現「看板の中に転ぶ⇒ 罠にかかる」
ou bien(ウビァン)あるいは、または

*il ramasse des haricots < ramasser(イルラマス・デザリコ)
des haricots(デザリコ)n.m.pl. 取るに足らないもの、わずかな獲物