フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

(メグレと印象的な女性たち)オバサン体形の若い郵便局員・アグラエ

 Elle s’appelait réellement Aglaé depuis son baptême.  Elle était très grosse,
surtout du bas, déformée comme une femme de cinquante ou soixante ans
qui vieillit gros et, par contraste, son visage n’en paraissait que plus enfantin,
car Aglaé avait tout au plus vingt-six ans.
(©Georges Simenon : Mon ami Maigret; Chap.7)

 彼女は生まれた時から本当にアグラエという名前だった。彼女はとても太っていた。特に下半身が、年を取って太った50か60歳の女性のように型崩れしていた。それに対して彼女の顔は子供っぽくしか見えなかった。というのもアグラエはせいぜい26歳だったからである。
(#57『メグレ式捜査法』第7章; 原題は「わが友メグレ」)

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Elle s’appelait réellement < s’appeler(エルサプレ・レエルマン)彼女は本当に~という名前だった(半過去形)

*Aglaé(アグラエ)普通のフランス人の名前としては非常に珍しい。ギリシア神話の美神アフロディテの侍女三人のカリスの一人アグラエア(Aglaea)で、典雅・優美を司る。
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Crédit photo : Aglaea, Camp Mythica Wiki
- Fandom

depuis son baptême(ドゥピュイ・ソン・バテム)命名の洗礼式以来(pを発音しない)

Elle était très grosse < gros(エレテ・トレ・グロス)彼女はとても太っていた(半過去形)

surtout du bas(シュルトゥ・デュバ)とりわけ下半身

déformée < déformé(デフォルメ)adj. pp. 変形した、型崩れした

qui vieillit gros(キ・ヴィエィイ・グロ)年を取って太った(単純過去形)

par contraste(パー・コントラスト)対照的に

*son visage(ヴィザージュ)n.m. 彼女の顔(son, sa の所有形容詞は対象となる物の性に従うので、son が「彼の」か「彼女の」かは前後関係で判断するしかない。

n’en paraissait que ~ < paraître(ナンパレッセ・ク)~としか見えなかった(半過去形)

enfantin(アンファンタン)adj. 子供の、子供っぽい、幼稚な

tout au plus(トゥトープリュス)どうみても、多くても、せいぜい