フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

フランス語の慣用表現「神様がどうしてなのかを知っている⇒ なんだかよくわからないうちに」

Il n’avait qu’à dormir.  Il avait suffisamment bu pour sombrer dans un sommeil
de plomb. (---) Il n’avait bu qu’une coupe de champagne.  Le reste du temps,
il avait surtout bu du vin, puis, Dieu sait pourquoi, de l’anisette.
(©Georges Simenon : Mon ami Maigret; Chap.5)

 

彼は眠るしかなかった。彼はとても深い眠りに陥るほど十分に飲んでいた。
(---) 彼はシャンパンを一杯しか飲まなかった。あとの時間はとりわけワインを飲んだが、それから何だかわからないうちにアニゼットになった。
(#57『メグレ式捜査法』第5章; 原題は「わが友メグレ」)

 

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*夕食後に地元の人間と飲み過ぎて悪酔いしたメグレがベッドでごろごろ寝返りしながら回想するシーンである。

 

Il n’avait qu’à dormir < avoir(イルナヴェクァ・ドルミール)彼は眠るしかなかった(半過去形)

 

suffisamment(シュフィザマン)adv. 十分に
 
*sombrer(ソンブレ)v.i. 沈む、陥る、崩壊する
sombrer dans le sommeil 深い眠りに陥る(慣用句)
 
*sommeil de plomb(ソメィユ・ドゥプロン)直訳では「鉛のような眠り」=非常に深い眠り plomb n.m. 鉛

 

*Il n’avait bu qu’une coupe(イルナヴェビュ・キュヌクプ)彼は一杯しか飲まなかった(大過去形)ne ~ que ///:/// しか~しない

 

Le reste du temps(ルレスト・デュダン)あとの時間は

 

Dieu sait pourquoi < savoir(デューセ・プルコヮ)直訳では「神様がどうしてかを知っている」⇒「自分はどうしてなのかわからない」
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自分がしたことの理由がわからないときに原因解明を神様に頼る慣用的な言い方。日本語でも「神のみぞ知る」「お天道様にお見通し」などがある。

 

*anisette(アニゼット)n.f. アニゼット(アニスの実の香料の入ったリキュール)

 

Crédit photo : Cristal anisette /
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