フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

(メグレの日常)玄関マットの下にカギを置く

  Il n’avait pas la clef de l’appartement, mais il savait la trouver sous le paillasson.  Tout chef de la brigade criminelle qu’il était, il n’avait jamais pensé à dire à sa femme que cette cachette était pour le moins illusoire.

(©Georges Simenon : Les Scrupules de Maigret; Chap.6) 

 

 彼はアパルトマンのカギを持っていなかったが、玄関マットの下にあることを知っていた。彼は犯罪捜査部の長ではあったが、この隠し場所が一番バレやすいことを妻に言おうと思ったことはなかった。

(#79『メグレと火曜の朝の訪問者』第6章)(メグレの心配事)

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*深夜に帰宅したメグレは、夫人に寝ているように言っていたので、自分で家のドアを開けて入った。(普通なら夫人が神技で事前にドアを開けてくれる)

 

Il n’avait pas la clef de l’appartement < avoir(イルナヴェパ・ラクレ・ドゥラパルトマン)彼はアパルトマンのカギを持っていなかった(半過去形)

 

mais il savait la trouver < savoir(メイルサヴェ・ラトルヴェ)しかし彼はそれが見つかるのを知っていた(半過去形)

 

*sous le paillasson(スール・パィヤソン)玄関マットの下に

mettre la clef sous le paillasson(慣用表現)直訳では「玄関マットの下にカギを置く」だが、「家を留守にする」、「家庭を放り出す」などの意味で使う。

**玄関マットの下にカギを置く伝統は、西洋ではかなり昔から「よくある手口」として使われている。日本でも地方都市の戸建ての家では「牛乳の配達ボックス」の中などに家のカギを「万一のために」隠しておくという方法がある。

 

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Crédit photo : Paillasson Déco Vintage @Cosy Déco

https://www.cosydeco.com/comptoir-de-famille/paillasson-deco-vintage-6773



Tout chef de la brigade criminelle qu’il était < être(トゥシェフ・ドゥラ・ブリガド・クリミネル・キレテ)彼は犯罪捜査部の長ではあったが(半過去形)

tout + ~ (形容詞・名詞・副詞)+que + ind./ subj. ~ではあるが、どんなに~でも

 

il n’avait jamais pensé < avoir, penser(イルナヴェ・ジャメ・パンセ)彼は考えたことがなかった(大過去形)

 

à dire à sa femme que(アディール・アサファム・ク)~と彼の妻に言うこと

 

cette cachette était pour < être(セットカシェット・エテプー)この隠し場所は~のためだった(半過去形)

 

le moins illusoire(ルモワン・イリュゾワール)一番ごまかせない