フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

(メグレの日常)帰る時いつも鍵を出す前に戸口が開く

  Il était une heure moins dix quand il avait enfin gravi les trois étages du boulevard Richard-Lenoir, et, comme d’habitude, la porte de son appartement s’était ouverte avant qu’il ait eu le temps de tirer la clef de sa poche.

(©Georges Simenon : Le revolver de Maigret; Chap.1er) 

 

 彼がリシャール・ルノワール大通りの建物の3つの階をやっとよじ登った時には1時10分前だった。そしていつもの通り、ポケットから鍵を出すいとまもなく彼のアパルトマンの戸口が開いた。

(#67『メグレの拳銃』第1章)

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*メグレの住まいはパリ11区のリシャール・ルノワール大通りにある。古い集合住宅の建物で、エレベーターがないので、メグレが帰宅するときはいつも息を切らせながら上る。通常各階ごとに左右に一つずつ住戸がある。メグレの家は3階にあることがこれでわかる。(日本では4階にあたる)理想的な主婦とされるメグレ夫人は、ここでも階段を上る足音(または振動)を察知して、メグレが鍵を出す前に戸をさっと開けるという神業を見せてくれる。

 

Il était une heure moins dix < être(イレテ・チュヌー・モワンディス)1時10分前だった(半過去形)il は非人称

 

quand il avait enfin gravi les trois étages < avoir, gravir(カンティラヴェ・タンファン・グラヴィ・レトロワゼタージュ)彼がやっと3つの階をよじ登ったとき(大過去形)

 

comme d’habitude(コム・ダビチュド)いつものように

 

la porte de son appartement s’était ouverte < être, s’ouvrir(ラポルト・ドゥソンナパルトマン・セテトゥヴェルト)彼のアパルトマンの戸が開いていた(半過去形)

 

avant qu’il ait eu le temps de < avoir, avoir(アヴァンキレトゥ・ルタンドゥ)彼が~する時間を取る前に(接続法・過去形)

 

tirer la clef de sa poche(チレラクレ・ドゥサポシュ)ポケットから鍵を取り出す