フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

(フランス語の tu と vous)直属の部下への tu 

  De tous ses collaborateurs, Lucas était le plus ancien et il arrivait à Maigret de le tutoyer.  Il tutoyait Lapointe aussi, parce qu’il avait débuté tout jeune, alors qu’il avait encore l’air d’un gamin trop poussé.

(©Georges Simenon : Maigret et le tueur; Chap.3) 

 

 メグレのすべての部下たちの中で、リュカが一番古くからいたのでお前呼ばわりすることがあった。彼はラポワントにもお前呼ばわりしていた。なぜならラポワントはごく若くして警視庁に入ってきたからで、その時はまだ背伸びした小僧っ子の雰囲気を持っていたからである。

(#97『メグレと録音マニア』第3章)

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*相手に tu を使うのか vous を使うのかと聞かれれば、ほとんどの場合 vous を使うのが無難だと言いたい。それほど tu の使い方は難しい。このくだりは作者シムノンがメグレの tu の使い方に言及した部分である。わざわざここで言わなくとも普段からメグレは直属の部下たちに対して tu を使っている。部下たちはメグレに対しては vous を使う。これは職場の上下関係の反映とは思うが、フランスの職場で上司が部下に tu を使うのが普通とは限らない。長年のメグレと部下たちの信頼関係、親近感が関わっているような気がする。一方で「不愛想な刑事」ロニョンに対しては直属ではないので vous を、また夫婦同士で親しくつき合っているパルドン医師に対しても vous で会話をしている。

 

*De tous ses collaborateurs(ドゥ・トゥセ・コラボラトゥー)彼のすべての部下たちの中で

collaborateur n.m. 協力者、一緒に働く仲間(同僚や部下たちを尊重して呼ぶ場合)

 

Lucas était le plus ancien < (リュカ・ゼテ・ルプリュザンシァン) リュカが一番古くからの仲間だった(半過去形)

 

et il arrivait à Maigret de le tutoyer < arriver(エティラリヴェ・タメグレ・ドゥルチュトワィエ)そしてメグレには彼をお前呼ばわりすることがあった(半過去形)

 

Il tutoyait Lapointe aussi < tutoyer(イル・チュトワィエ・ラポワント・オッシ)彼はラポワントにもお前呼ばわりしていた(半過去形)

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Crédit photo : L’écran sur Youtube

“Maigret and the Night Club Dancer” - Series 2 - Episode 1 [1993]

Michael Gambon as Maigret with James Larkin as Lapointe, ©Granada TV

 

**余談ながら、いつも「若い」ラポワントと呼ばれている人物については、その青年らしい初々しさ、純粋さのイメージとしては、英国版TVドラマの「メグレ」(マイケル・ガンボン主演)の中のラポワント役が一番好ましいと個人的には思っている。(画像参照)

 

parce qu’il avait débuté tout jeune < avoir, débuter(パースキラヴェ・デビュテ・トゥジューヌ)なぜなら彼はごく若くして警視庁に入っていたから(大過去形)



*alors qu’il avait encore l’air de < avoir(アローキラヴェ・タンコー・レールドゥ)彼はその時まだ~の感じを持っていた(半過去形)

avoir l’air de ~の様子を見せる

 

*un gamin trop poussé(アンギャマン・トロプッセ)背伸びした小僧っ子