フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

(フランス語の tu と vous)捜査の指揮下に入った刑事への tu

Tu iras avec elle, mon petit, tu comprends ? (---) Il faut toujours aller aux
enterrements, c’est un vieux principe qui m’a souvent réussi.  Aie l’œil.  C’est
tout.
 Il croyait même se souvenir que, tout en tutoyant l’inspecteur, il lui avait
raconté deux ou trois histoires d’enterrements qui l’avaient mis sur la piste
de criminels.
(©Georges Simenon : Mon ami Maigret; Chap.6)

「彼女と一緒に行くんだ。いいかい、わかるね? (---) 葬式には常に行く必要がある。それは昔からの鉄則で、私もしばしばうまく行ったんだ。目をつけろ。それだけだ。」
 彼は思い出してみたが、ルシャ刑事にくだけた言い方をしながら葬式に関わる2~3の事例を語っていた。それが犯人の手がかりを得ることになったのだ。
(#57『メグレ式捜査法』第6章; 原題は「わが友メグレ」)

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*現地でメグレを迎えた若い刑事ルシャに対し、始めのうちはまだ慣れないせいか、普通に vous で話していたが、夕食後のくつろいだ雰囲気の中で、臨時の部下として動いてもらう必要を感じたので、急に tu に変わったのだ。

Tu iras avec elle < aller(チュイラ・ザヴェッケル)君は彼女と一緒に行くんだ(単純未来形だが、説き伏せるような勧奨のニュアンスがある)

tu comprends ? < comprendre(チュコンプラン)君わかるね?

*Il faut toujours aller aux enterrements(イルフォ・トゥジュー・ザレオ・ザンテールマン)葬式にはいつも行く必要がある
enterrement(アンテールマン)n.m. 埋葬、葬式、葬儀
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Crédit photo : La cimetière de la
Ritorte; Chemin de la Ritorte,
Hyères © Google street-view

vieux principe(ヴュープランシプ)n.m. 昔からの鉄則

qui m’a souvent réussi(キマ・スーヴァンレウッシ)私にとってしばしば成功した

Aie l’œil < avoir(エロィユ)目をつけろ(二人称命令形)  

C’est tout(セトゥ)それだけだ(慣用句)

*tout en tutoyant l’inspecteur(トゥタン・チュトワィヤン・ランスペクトゥ)刑事になれなれしい言い方をしながら

*il lui avait raconté < raconter(イルリュイ・アヴェラコンテ)彼は彼に語っていた(半過去形)和訳の場合はどちらかの「彼」を固有名詞などにしたほうがいい。

deux ou trois histoires d’enterrements(ドゥ・ウ・トロヮ・ジストワール・ダンテールマン)葬式に関する2~3の事例

*qui l’avaient mis sur la piste(キラヴェミ・シューラピスト)直訳では「足跡の上に彼を置いた」だが、日本語では「手がかりを得ることになった」あたりが妥当な表現になる。西欧の狩猟民族が獲物の後を追いかけるのを犯人の追跡に重ね合わせた表現である。
piste(ピスト)n.f. 足跡、痕跡、道筋、陸上競技のトラック、競技場、滑走路

criminels < criminel(クリミネル)n.m. 犯人、犯罪者