フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

(フランス語の tu と vous)なじみの島に戻ってきて

 Elle était entrée à L’Arche comme chez elle, avait dit le plus naturellement
du monde :
ー Il te reste une chambre pour moi, Paul ?
ー Il faudra te contenter de la petite chambre à côté de la salle de bains.
 Puis elle s’était tournée vers Maigret.
Vous ne voulez pas monter un moment, monsieur le commissaire ?
(©Georges Simenon : Mon ami Maigret; Chap.4)

 彼女は自分の家に入るように『ノアの箱舟』に入って行き、ごく自然に言った。
「ポール、あたし用の部屋残ってない?」
「風呂場の横の小さい部屋で我慢するならね。」
 それからメグレのほうを振り返った。
「警視さん、ちょっと部屋に上がりませんか?」
(#57『メグレ式捜査法』第4章; 原題は「わが友メグレ」)

∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞

*被害者の元愛人だったジネット(Ginette)は、若い頃娼婦だったが、結核を病んでいたのでメグレが世話をして施療更生施設に送りこんだ女だった。その後南仏で暮らし、今はニースのナイトクラブの経営を任されていた。被害者の葬儀のために島に戻ってきたという。
イメージ 1

顔馴染みの旅籠の主人とはごく自然に tu 同士で会話した。メグレに対しては vous を使ってきちんとした応対をしている。

Crédit photo : L’écran sur
youtube de “Maigret e il falso
amico”, Fight club
(version italienne)

**Elle était entrée(エレテ・タントレ)彼女は入っていた(半過去形)
普通なら elle entra くらいの単純過去形でもいいように思うが、ずんずん先に入って行ったからだろうか。特に小説の場合、叙述に単純過去形を使うのか、半過去形を使うのか、あるいは複合過去形なのかの微妙な使い分けが相変わらずわからない。

comme chez elle(コム・シェゼル)彼女の家のように

*avait dit(アヴェディ)言っていた(半過去形)この場合も勝手に先にしゃべっていたから?
le plus naturellement du monde(ルプリュ・ナチュレルマン・デュモンド)この上ないほどごく自然に

*Il te reste < rester(イルトゥレスト)あんたのところに残っている(il は無人称)

*Il faudra te contenter de < se contenter(イルフォードラ・トゥコンタンテ)我慢する必要があるだろう(未来形) il は無人

*s’était tournée vers ~(セテトゥルネ・ヴェー)~の方に向きを変えた(半過去形)se tourner  v.pr. 向きを変える
*Vous ne voulez pas monter(ヴヌヴレパモンテ)あなたは上がりたくないですか?⇒上がりませんか