フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

フランス語の慣用表現「耳を引っ張らせる⇒ しぶしぶ従う」

 Le Clou Doré n’était plus le bar de jadis, où on ne rencontrait guère que des
truands sur lesquels Palmari (---) ne se faisait pas trop tirer l’oreille pour
donner des tuyaux au commissaire.
(©Georges Simenon : La Patience de Maigret; Chap.4)

 金釘亭はもはや昔のような飲み屋ではなかった。当時はならず者たちの溜まり場で、店主のパルマリはそれほど嫌がらずに警視に彼らの情報を流してくれたのだった。
(#91『メグレと宝石泥棒』第4章; 原題は「メグレの忍耐」)

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*jadis(ジャディス)単独では副詞(adv.)「 昔」「かつて」、形容詞的に
(adj.) temps jadis「昔」「往時」、この文では du temps jadis の temps を省略して名詞的に使っている。

ne ~ guère que(ヌ・ゲールク)ほとんど~しかない

rencontrait < rencontre(ランコントレ)v.t. 出会った、顔を合わせた(半過去形)

truand(トリュアン)n.m. やくざ、ごろつき、ギャング

*ne se faisait pas trop tirer l’oreille pour < se faire(ヌスフゼパトロ・チレロレィユ・プール)それほど嫌がらずに~してくれた(半過去形)
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*se faire tirer l’oreille(スフェールチレロレィユ)慣用句の基本形:直訳では「耳を引っ張らせる」だが、現在の意味は「しぶしぶ言うことをきく」「いやいやながら~をする」になる。特に聞き分けのない子供の耳を引っ張る場面は欧米にはしばしば見られる。

Crédit photo : À la claire hier
se-faire-tirer-loreille.html

tuyaux < tuyau(チュヨー)n.m. 管、パイプ、情報