フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

フランス語の慣用表現「まさか」(2)

ー Vous venez pour une œuvre de charité ?
ー Non, je suis de la police.
Cela paraissait émerveiller la vieille dame.
ー Vraiment !  De la police !  Dans cette maison si tranquille !  Ne me dites
pas qu’un locataire a été cambriolé ?
Elle souriait, le visage doux et bon comme celui d’une sœur de Saint-Vincent-
de-Paul sous la cornette.
(©Georges Simenon : La Patience de Maigret; Chap.3)

「慈善活動ですか?」
「いや、警察のものです。」
 その言葉は老婦人を驚嘆させたようだった。
「本当に! 警察なの! こんな静かな家に! まさかどなたかが押し入られたとか?」
 彼女は微笑んだ。優しく善良な顔立ちはまるで角張った白頭巾をかぶった聖ヴァンサン・ド・ポール修道会のシスターのようだった。
(#91『メグレと宝石泥棒』第3章; 原題は「メグレの忍耐」)

∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞

*パリのアパルトマンを個別訪問するのは、慈善活動の寄付集めか、セールスマンと相場が決まっていて、警察の聞き込みは例外中の例外なのだ。

œuvre de charité(ウーヴル・ドゥ・シャリテ)n.m. 慈善活動

Non, je suis de la police(ノン・ジュスィ・ドゥラポリス)いいえ、私は警察のものです

paraissait < paraître(パレッセ)v.t. ~のように見えた(半過去形)

émerveiller(エメルヴェイエ)v.t. 驚嘆させる、感嘆させる

Vraiment(ヴレマン)adv. 本当に

tranquille(トランキル)adj. 静かな、穏やかな

Ne me dites pas que(ヌムディトパ・ク)直訳では「~だと私に言わないで」だが、命令形での疑問文なので「まさか~なんてということは?」のニュアンスになる。
*参考再出:フランス語の慣用表現「まさか」(1)

locataire(ロカテール)n.m. 賃借人

cambriolé < cambrioler(カンブリオレ)v.t. 押し入られた(過去分詞)

イメージ 1
Saint-Vincent-de-Paul(サンヴァンサン・ドポール)聖ヴァンサン・ド・ポール(1581-1660)の名前を冠したカトリック教女子修道会。世界的に貧しい病人の看護や孤児の教育などの社会奉仕活動を行っている。

cornette(コルネット)n.f. 修道女のかぶる白頭巾(日本でも看護師のナースキャップに影響があると思われる)