フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

フランス語の慣用表現「まさか」

ー Un événement inattendu… Manuel Palmari…
Ne me dis pas qu’il a disparu ?
ー Il a été tué.  Il a reçu plusieurs balles, dans son fauteuil roulant.  
(©Georges Simenon : La Patience de Maigret; Chap.1er)

「予期せぬ出来事です。マニュエル・パルマリが・・・」
まさかいなくなったとか?」
「殺されました。車椅子のままで何発か撃たれたんです。」
(#91『メグレと宝石泥棒』第1章; 原題は「メグレの忍耐」)

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événement(エヴェヌマン) n.m. 出来事

inattendu(アナタンデュ)adj. 予期しない

Ne me dis pas que(ヌムディパ・ク)直訳では「~だと私に言うな」
(命令形の疑問文)Ne me dis pas qu’il a disparu ?「いなくなったと言うなよな」⇒「まさかいなくなったとか?」
この形での用例が載っていない仏和辞書も多いが、フランスでは「まさか?」以外にも「(本当は)そう言わないでほしい」とかの否定願望句としても結構使われるようだ。
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日本ではそれほど有名ではないが、大戦前後に活躍した女優でシャンソン歌手のマリー=ジョゼ (Marie-José, 1914-2002) にも
« Ne me dis pas que tu m'aimes »
という歌がある。これは詳しくはわからないが「愛してると言わないで」のようだ。


Il a été tué(イラエテチュエ)彼は殺された(受動態・複合過去形)

Il a reçu plusieurs balles(イラルシュ・プリュジューバル)彼は数発の銃弾を受けた(複合過去形)

fauteuil roulant(フォトゥイユ・ルーラン)車椅子