フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

フランス語の慣用表現「耳に蚤を置く⇒ 怪しまれる」

» J’ai préféré ne pas m’en mêler et suivre les choses à distance… Au cas où
il y aurait eu un journaliste, il était inutile de lui mettre la puce à l’oreille
Je ne sais pas si j’ai bien fait...
(©Georges Simenon : L’ami d’enfance de Maigret; Chap.2)

 

「私はなるべく関わらないようにして、出来事を遠くから観察するようにしました。場合によっては新聞記者がいないとも限りませんし、変に怪しまれるのは無駄ですからね。うまくやったかどうかは知りませんけど。」
(#96『メグレの幼な友達』第2章)

 

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*容疑者の男を尾行するように命令された若いラポワント刑事の報告である。この男は尾行されることをあらかじめ知っており、目くばせをしたり、一緒に飲まないかと誘ったり、挙句の果てにはセーヌ川に飛び込んで泳いだり、と散々なことをしでかす。

 

J’ai préféré < préférer(プレフェレ) ~するように行動する

 

m’en mêler < se mêler(マンメレ)かかわりを持つ、介入する、加わる、合流する

 

suivre les choses(スィーヴルレショーズ)物事を追う

 

à distance(アディスタンス)距離を置いて、遠くから

 

Au cas où(オカウ)場合によっては(後に従属節・条件法が続く)
il y aurait eu < il y a(イリオーレウ)いるかもしれない(条件法過去)
journaliste(ジュルナリスト)n.m. 新聞記者
上記の訳文では「いないとも限りませんし」としてみたが、仏語教室の先生方からは正しく訳していないということで「x」をもらう可能性がある。和訳では原文にできるだけ近く訳すべきなので「いるかもしれないので」が正しいだろう。ただし日本語の「二重否定文」のニュアンスは限りなく条件法の心情に近いような気がしている。

 

il était inutile de < il est inutile de(イレテ・ティニュティル)~する必要がない、無駄である、(半過去形)
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mettre la puce à l’oreille(メトル・ラピュス・アロレィユ)直訳では「耳にノミを置く」だが、「怪しまれる」「不信感を与える」「注意を引きつける」などの慣用表現。フランスではかなり古くから使われている。確かに、ノミを耳元に放せば「あれ何か変だな」という反応になるのは明らかだ。

 

Je ne sais pas si(ジュヌセパシ)~かどうかわからない。
j’ai bien fait < faire(ジェビアンフェ)よくやった(複合過去形)