フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

メグレ警視の食卓「帆立貝のアントレ、牛バラ肉の蒸し煮」

ー Passez-moi la carte, s’il vous plaît… (---) Il y a des coquilles Saint-
Jacques, Janvier… Qu’en dis-tu ?
ー Entendu pour les coquilles Saint-Jacques…
ー Ensuite de la côte de bœuf braisée
ー D’accord aussi…(---)
ー Un vin léger… Un beaujolais ?...
ー Volontiers…
Le maître d’hôtel était raide comme un piquet derrière eux.
(©Georges Simenon : Maigret et l'indicateur; Chap.5)

「メニュを見せてくれ。 (---) 帆立貝がある。ジャンヴィエ、どうだい?」
「帆立貝でいいです。」
「それから牛バラ肉の蒸し煮だ。」
「了解です。」(---)
「軽めのワインでは、ボージョレか?」
「喜んで」
給仕長は彼らの背後で棒杭のように突っ立っていた。
(#101『メグレと匿名の密告者』第5章)

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*食べる前から気分の悪い思いをした店ではおいしい食事が出来そうにないが、意地を通そうと思ったメグレは部下のジャンヴィエと注文を決める。周りの客よりもサービスが遅く、料理を待たされるのは覚悟の上と、パイプをふかすのだった。
Passez-moi < passer(パッセ)渡す

*carte(カルト)n.f. 献立表、メニュ、地図、名刺、カード、はがき
à la carte(アラカルト)一品料理を選んで、というのも献立表に記載されている中から選ぶという元々の意味がある。

coquilles Saint-Jacques(コキーユ・サンジャク)帆立貝(小ぶりのものが多いせいか複数形で言われる)

参考画像:Noix de Saint Jacques au
curcuma et lait de coco(帆立貝、ウコンとココナツミルクのソース和え)

Qu’en dis-tu ?(カンディチュ)どうかね?(そのことについて何か言うことがあるか?)

côte de bœuf braisée(コトドゥブフブレゼ)牛バラ肉の蒸し煮

参考画像:boeuf braisé au vin rouge(赤ワイン煮)Urbaine City


*ジャンヴィエの返事は三つともすべてOKを意味するが、同じ単語を再使用しないことが会話上の配慮とされている。この三つくらいは覚えておきたい。
Entendu pour(アンタンデュ)
D’accord aussi(ダコードッシ)
Volontiers(ヴォロンティエ)
*Un beaujolais(ボージョレ)毎年秋の新酒「ボージョレ・ヌーヴォ」は期間限定で大騒ぎするのではなく、半年後の5月でも普通に飲まれているということ。
Le maître d’hôtel(メートルドテル)給仕長、給仕頭

*raide comme un piquet(レドコマンピケ)棒杭のように突っ立って(慣用語句)être droit comme un piquet ともいう。