フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

フランス語の慣用表現「箱の悪魔のように⇒ びっくり箱のように」

ー Par la vitre, le mastroquet le voyait s’agiter dans la cabine, gesticuler tout
seul… Puis, quand l’autre client est entré, le premier est sorti de sa cabine
comme un diable d’une boîte et est parti sans rien boire, sans rien dire, se
précipitant vers la place Saint-Michel...
(©Georges Simenon : Maigret et son mort; Chap.1er)

「窓ガラス越しに店主は、男が電話ボックスの中で、大げさな身振りをしながら大声で話しているのを見ました。それから、別の客が店に入ってくると、最初の男はびっくり箱のように電話ボックスから飛び出すと、何も飲まずに、何も言わずにサン=ミシェル広場の方に向かって出て行きました。」
(#55『メグレと殺人者たち』第1章)

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*ジャンヴィエの報告の続き。

Par la vitre(パーラヴィトル)窓ガラス越しに

mastroquet(マストロケ)n.m. 酒場の主人、カフェの主人

le voyait s’agiter dans la cabine < voir(ルヴォワィエ・サジテ・ダンラキャビヌ)

gesticuler tout seul(ジェスティキュレ・トゥスール)一人で大げさな身振りをする

quand l’autre client est entré < entrer(カン・ロートルクリアン・テタントレ)他の客が入って来た時(複合過去形)

le premier est sorti de sa cabine < sortir(ルプルミエ・エソルティ・ドゥサキャビヌ)最初の男は電話ボックスから出た(複合過去形)

*comme un diable d’une boîte(コマン・ディアブル・デュヌボワト)びっくり箱のように。直訳では「箱の悪魔」だが「びっくり箱」が正解。フランスでは、始めの頃のびっくり箱には、化け物のような人形が仕掛けられていた。
イメージ 1
Crédit photo : Diable en boîte, Wikipédia
d’après une lithographe de Gavarni

*est parti sans rien boire < partir(エパルティ・サンリァンボヮール)何も飲まずに出て行った(複合過去形)sans rien で二重否定のようにも思えるが、「何も~せずに」の強調語句となる。

sans rien dire(サンリァンディール)何も言わずに

*se précipitant vers < se précipiter(スプレシピテ・ヴェー)~の方に向かって急ぎ足で行った(現在分詞)現在分詞は「~しながら」と訳す場合も多いが、ここでは前の動詞句の結果説明の表現なので、「~した」と言う方が自然になる。