フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

メグレ警視の食卓「ブイヤベース」(海辺のレストラン)

Il mangea la bouillabaisse dans un petit restaurant propret, seul dans son coin. (---)
Il se sentait paresseux.  Pour un peu, il aurait fait venir Mme Maigret de Paris et ils auraient passé huit jours de vacances à Bandol.
(©Georges Simenon : Maigret et l'indicateur; Chap.5)

 

彼は小さなこぎれいなレストランの片隅で一人でブイヤベースを食べた。(---) 彼は気が抜けた感じになっていた。もう少しで、夫人をパリから呼び寄せて、バンドルで8日間のバカンスを過ごそうかという気持になるところだった。
(#101『メグレと匿名の密告者』第5章)

 

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*南仏には人の心を解きほぐす魅力というか魔力がある。仮に仕事で行っても100%仕事の頭で終わるはずがなく、夕暮の海辺のレストランで波の音を聞きながら夕食を取る至福の時間は得難い経験となる。「今度は家内を連れて来たい」とメグレが感じる気持は結構普遍性があるように思う。

 
 
mangea < manger(マンジャ)食べる(単純過去形)

 

bouillabaisse(ブイヤベース)n.f. 南仏の美味な名物料理で、トマト、にんにく、サフランなどで魚介類を煮込んだ鍋料理

 

Provence 7: La bouillabaisse de Marseille

 

propret(プロプレ)adj. こぎれいな

 

se sentait < se sentir(スサンテ)自分が~だと感じる(半過去形)

 

paresseux(パレスゥ)adj. 面倒な感じ、けだるい感じ、怠けたい気持ち

 

Pour un peu(プーアンプゥ)もう少しで、危いところで

 

il aurait fait venir(イローレ・フェヴニール)呼び寄せる、来させる(条件法過去形、~したらどうかなと)現実にはありえない想念を表わす
ils auraient passé(イルゾーレ・パッセ)過ごしたらどうか(条件法過去形、三人称複数)
 
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*バンドル(Bandol) はワインの産地 (AOC=appelation d’origin contrôlée アペラシォン・ドリジンコントロレ=原産地管理呼称)としても有名。中でも赤ワインは南仏で最高の一つとされる。メグレも間違いなく飲んだに違いないが、原文の記述には出てこないのが残念。日本のワイン市場では「バンドール」と長く伸ばす表記が多く見られるが、英米人風の発音の影響かもしれない。