フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

フランス語の慣用表現「レコードを替える時⇒話題を変える頃合」

ー Il serait temps de changer de disque…  Nous sommes amants, c’est
vrai…
ー C’est mieux ainsi.
Ce n’est pas un drame
ー Sauf quand le mari reçoit une balle de fort calibre en pleine poitrine…
(©Georges Simenon : Maigret et l'indicateur; Chap.5)

「そろそろ話の筋を変える頃合だな。俺たちは出来た関係だよ、たしかに。」
「そりゃ結構なことだ。」
たいした話じゃない。」
「もしその旦那が土手っ腹に一発食らわなかったらな。」
(#101『メグレと匿名の密告者』第5章)

∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞

Il serait temps de < il est temps de(イルスレ・タンドゥ) ~ をする頃合である
(temps は冠詞なしで使う。直説法でもいいが、ニュアンスに「そろそろ」の意味を込めた婉曲話法=条件法が適している。)

*changer de disque(シャンジェドゥディスク)レコードをかけ替える⇒ 慣用表現で「話題を変える」disque n.m. も冠詞を外して使う。20世紀はレコードの時代だった。CDになってもフランス語では disque compact(ディスク・コンパクト)というのでまだまだ「ディスクを替える」は通用するが、今後はこの表現は衰退していくだろう。
イメージ 1

Nous sommes amants(ヌソムザマン)フランス語では「私たちは恋人同士です」などと堂々と人前で話すが、奥ゆかしい日本語では訳しにくい。冠詞をつけないのも慣用かも。

c’est vrai(セヴレ)本当だ、たしかに(常用語句)

C’est mieux ainsi(セミューザンシ)直訳風で「そういうことならますますいいね」=「それはよかった」(頻用語句)

Ce n’est pas un drame(スネパザンドラム)大騒ぎする話ではない、大したことではない

Sauf(ソーフ)~以外は、~を除けば

reçoit < recevoir(ルソヮ)受ける、受取る(直説法現在形)

une balle de fort calibre(ユヌバル・ドゥフォーカリブル)銃口の大きい銃弾を一発

*en pleine poitrine(アンプレーヌポヮトリーヌ)直訳では「胸もと一杯に」だが、日本語では「土手っ腹に」がわかりやすい。


*事件の概容についてはこちらへ #101