フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

フランス語の慣用表現「ヤブ学校をする=学校(または仕事)をさぼる」

Chaque fois qu’une enquête en arrivant à un certain point, il éprouvait le
besoin de faire en quelque sorte l’école buissonnière, c’est-à-dire de
déjeuner avec un de ses collaborateurs à la Brasserie Dauphine.
(©Georges Simenon : Maigret et l'indicateur; Chap.4)

一つの事件の捜査がある程度にさしかかる度ごとに、彼はある種のヤブ学校をしたくなる感じになった。つまり部内の刑事の一人と一緒にブラッスリ・ドーフィヌで昼食をとることなのだ。
(#101『メグレと匿名の密告者』第4章)

∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞

chaque fois que ~(シャクフォワ・ク)常用句「~するたびに」

enquête(アンケート)n.f. 調査、アンケート、捜査、尋問

en arrivant à ~(アンナリヴァン・ア)~に到達すると(現在分詞形)

un certain point(アンセルタン・ポヮン)ある一定の程度

éprouvait  < éprouver(エプルヴェ)感じる、覚える
le besoin de(ルブズヮン・ドゥ)~の必要性

en quelque sorte (アン・ケルクソルト)いわば、ある種の

*faire l’école buissonnière(フェール・レコル・ビュイソニエール)直訳で「ヤブ中の学校をする」つまり「学校に行かずに野原や川で遊ぶ」転じて「仕事をサボってぶらぶら遊ぶ」を意味する。日本でも、ある地方に特有の「山学校に行く」という言い方があるが、まさに日仏共通の
イメージ 1
概念である。メグレがこの日の外食をサボった感じと思うのは、普通ならば昼食は家に戻って食べるのが慣例だという点から。

buisson  n.m. やぶ、茂み、低木の叢林
buissonnière < buissonnier  adj. 茂みにいる、ヤブの中の
Crédit : École buissonnière, estampes; ©RMN,
Marseilles, Musée des Civilisations de l'Europe
et de la Méditerranée

c’est-à-dire(セタディール)常用句「つまり」「言い換えると」

collaborateur(コラボラトゥール)n.m. 協力者、共働者(直訳的)
現代では、仕事上一緒に働いてくれる仲間や部下を指す場合が多い。



*蛇足ながら2017年秋にフランスで公開された映画に同名の«
L’école buissonnière » がある。これはパリの児童養護施設で育った少年がある時、ソローニュ地方の広大な領地の番人夫妻のもとに連れて行かれ、生命力あふれる大自然の中でさまざまな体験をするというもの。ただし連れて来られた本当の理由とは?(日イメージ 2本では未公開かも)