フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

フランス語の慣用表現「アダムもイブも知らない⇒ まったく知らない」(2)

  Et voilà qu’il s’attachait à celui-ci, si terne au début, à cet homme qu’il n’avait jamais vu, qu’il ne connaissait ni d’Eve ni d’Adam et qui était mort si bêtement au bord de son lit (---) d’une balle qui n’aurait même pas dû le tuer.

(©Georges Simenon : On ne tue pas les pauvres types; Chap.2) 

 

 そして彼はこの男のことに取り組んだのだが、始めにはとても漠然としていて会ったこともなく、全く知らなかった。彼を殺すことにはならないような銃弾で (---) 自分のベッドの端であっけなく死んでいたのだ。

(#53『可哀そうな奴は殺さない』第2章)

∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞

 

*鑑識の結果、被害者を撃った銃弾は縁日で射的に使うような空気銃で、運悪く心臓に命中したのだが、普通ならちょっとケガする程度のものだった。

 

Et voilà que(エヴォワラ・ク)それで

 

il s’attachait à celui-ci < s’attacher(イルサタシェ・アスリュイシ)彼はこの男に取りかかっていた(半過去形)

 

si terne au début(シテルヌ・オーデビュ)始めにはとても漠然として

 

à cet homme qu’il n’avait jamais vu < avoir, voir(アセットム・キルナヴェ・ジャメヴュ)この男に関して彼は見たことがなかった(大過去形)

 

*qu’il ne connaissait ni d’Ève ni d’Adam < connaître(キルヌコネッセ・ニデヴ・ニダダム)直訳で「アダムのこともイブのことも知らない」⇒ 彼がまったく知らなかった(半過去形)

connaître qn. ni d’Eve ni d’Adam(慣用表現)xxのことは全く知らない 

 

Crédit photo : Ni d’Eve ni d’Adam : la critique du film (1997) @Cine Dweller 

https://cinedweller.com/movie/ni-deve-ni-dadam-la-critique-du-film/

 

※ここで不思議に思うのは、フランス語ではどうして「イブ」のほうを先に言うのか?単に語調の観点からなのだろうか。日本語の場合でも「猫も杓子も」を「杓子も猫も」とは言わない。また「虻蜂(あぶはち)取らず」も「蜂虻取らず」にはならない。

 

*参考ブログ:

生きたフランス語見聞録 Deslysさんのブログ (2015.03.15)

「Ni d'Eve, ni d'Adam」はどう訳す?

https://deslys.blog.fc2.com/blog-entry-295.html

 

**参考再出:

フランス語の慣用表現「アダムもイブも知らない⇒ まったく知らない」

https://maigretparis.hatenablog.com/entry/2021/10/10/163549

(#59『メグレと老婦人』第3章)2021.10.10

 

et qui était mort si bêtement < être(エキエテモール・シベトマン)あっけなく死んでいた(半過去形)

 

au bord de son lit(オーボードゥソンリ)自分のベッドの端で

 

d’une balle(デュヌバル)銃弾で

 

qui n’aurait même pas dû le tuer < avoir, devoir(キノーレ・メームパ・デュルチュエ)殺すことなどありえなかった(条件法・過去形)