フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

(メグレの特性)運命の修繕人

  Il ne l’avait dit à personne, n’avait jamais prononcé les deux mots à voix haute, fût-ce pour lui-même : il aurait voulu être un « raccommodeur de destinées. »

(©Georges Simenon : Maigret et le corps sans tête; Chap.3) 

 

 彼はそれを誰にも言っていなかったし、声高にはっきり口に出したこともなかった。それは彼自身のためなのか、《運命の修繕人》になりたかったのにと。

(#74『メグレと首無し死体』第3章)

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《運命の修繕人》とはメグレの生業(なりわい)を言い表す一言として知られている。警察官としての職業を通して、関わった人々の人生を理解すること、その結果として事件を解決すること、それが「運命を修繕する」という難解な言葉になっている。正直わかるようでわからない。しかし犯罪者の心を動かすのは確かだ。

 

Crédit d’image : L’écran sur Youtube

Téléfilm “Maigret et le corps sans tête” de “Les enquêtes du commissaire Maigret” © Antenne 2, 1974; ©INA - Institut National de l'Audiovisuel

 

Il ne l’avait dit à personne < avoir, dire(イルヌラヴェディ・アペルソンヌ)彼はそれを誰にも言っていなかった(大過去形)

 

*n’avait jamais prononcé les deux mots < avoir, prononcer(ナヴェジャメプロノンセ・レドゥモ)決してはっきり語っていなかった(大過去形)

dire deux mots à(慣用句)~にはっきり言う

 

à voix haute(アヴォワ・オート)声高に、大声で

 

fût-ce pour lui-même < être(フュス・プーリュイメーム)それは彼自身にとって~だった(接続法・半過去形・倒置形)

 

il aurait voulu être < avoir, vouloir(イローレヴリュ・エートル)彼はなりたかったのに(条件法・過去形)

 

un « raccommodeur de destinées. »(アン・ラコモドゥー・ドゥ・デスティネ)《運命の修繕人》



*参考サイト:「いるすか」メグレ~運命の修繕人(感想文)

https://irusuka.sakura.ne.jp//maigret/maigret02.html#sanstete