フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

(こだわりの酒)地物のブランデー「フィランシス」

  Un petit bar sentait si bon le café et le « fil-en-six » qu’ils ne résistèrent ni l’un ni l’autre, entrerent et s’accoudèrent devant de grosses tasses qui fleuraient l’alcool.

(©Georges Simenon : Maigret et la vieille dame; Chap.5) 

 

 小さなバーからはとてもいいコーヒーと「フィランシス」の香りがしたので、彼らは二人とも我慢できずに店に入ると、酒の匂いのする大きなカップの前に肘をついた。

(#59『メグレと老婦人』第5章)

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*フランスの「フィランシス」に関する情報は検索してもほとんど出てこない。昔の地物のブランデーの銘柄だったのかもしれない。ここではカフェ・アロゼ(Café arrosé) のようにして飲んだように思われる。

 

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Crédit photo : fil en six, Bob, ABC de la langue française

@Languefrancaise.net

https://www.languefrancaise.net/Bob/72203

 

Un petit bar sentait si bon le café < sentir(アンプチバー・サンテシボン・ルキャフェ)小さなバーではとてもいいコーヒーの香りがした(半過去形)

 

*et le « fil-en-six » (エル・フィランシス)それと「フィランシス」直訳では「六つにした糸」(もし「六本に束ねた糸」なら複数形 fils になるはず)

**類似用例に  “couper un fil en quatre”  がある。直訳で「一本の糸を四つに切る」⇒ 些細なことにこだわる

***Wiktionnaire で fil-en-six を検索するとメグレの最初の事件「怪盗レトン」の酒場の場面でも出てきていた!

https://fr.wiktionary.org/wiki/fil-en-six



qu’ils ne résistèrent ni l’un ni l’autre < résister(キルヌレジステール・ニラン・ニロートル)彼らはどちらも我慢できなかった(単純過去形)

 

entrerent et s’accoudèrent < entrer, s'accouder(アントルル・エサクデール)店に入って肘をついた(単純過去形)

 

devant de grosses tasses(ドヴァンドゥ・グロスタス)大きなカップを前にして

 

qui fleuraient l’alcool < fleurer(キ・フルーレラルコル)酒の匂いがした(半過去形)