フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

メグレ警視の食卓「野ウサギの王朝風」

  Ce soir-là, il fut question de cuisine, en particulier de la façon de préparer le lièvre à la royale.

  Mme Chabot avait fait à nouveau des profiteroles et Maigret en mangea cinq, écœuré, le regard sans cesse fixé sur les aiguilles de la vieille horloge. 

(©Georges Simenon : Maigret a peur; Chap.9) 

 

 その日の夕食では料理のこと、特に「野ウサギの王朝風」の調理の仕方についてが話題となった。

 シャボ老婦人はもう一度プロフィトロルを作っていて、メグレはうんざりしながら、古い掛け時計の針をたえず見つめてそれを5個食べた。

(#60『メグレの途中下車』第9章)原題「メグレは恐怖の念を抱く」

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*メグレが夜行列車で帰る前の判事宅での最後の夕食だが、目に見える形での事件の解決はしていなかった。シャボの老母がいるので、事件の話はせずに、料理の話題になった。(判事のシャボは結婚していなかったようだ)

 

Ce soir-là(スソワールラ)その日の夜は

 

*il fut question de cuisine < être(イルフュ・ケスチォンドゥ・キュイジーヌ)料理のことが話題となった(単純過去形)

il est question de ~が問題である、~が話題の中心になる、~が取り沙汰される(慣用句)il は非人称

 

en particulier de la façon de préparer(アンパルティキュリエ・ドゥラファソン・ドゥプレパレ)特にその調理の仕方について

 

*le lièvre à la royale(ルリエーヴル・アラロワィヤル)野ウサギの王朝風

非常に手の込んだジビエ料理の一つ。太陽王ルイ14世の宮廷で作られたのが端緒とされる。野ウサギの胴体の肉を丸ごと使って、オリーブ油と香草で浸して一晩寝かせたり、フォワグラやトリュフや野菜を胴体に詰め込んで一晩煮込んだり、野ウサギの血を混ぜながら独特のソースを作ったりと、複雑この上ない。腕に自信のある料理人が挑戦して成果を披露するほどである。

 

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Crédit photo : Le mot à la bouche : Le lièvre à la royale @lechef.com

©Ambassade d'Auvergne, Paris

レストラン「アンバサド・ドーヴェルニュ」(直訳で「オーヴェルニュの使節」)はパリ3区にある伝統的な郷土料理の老舗。質実剛健な味わいがある。

https://www.lechef.com/au-quotidien/2019-11-08-le-mot-a-la-bouche-le-lievre-a-la-royale/

 

avait fait à nouveau des profiteroles < avoir, faire(アヴェフェ・アヌーヴォ・デプロフィトロル)もう一度プロフィトロルを作っていた(大過去形) 

*参考再出:(メグレの特性)甘いものは苦手(プロフィトロル)(2021.07.16)
https://maigretparis.hatenablog.com/entry/2021/07/16/100745

 

en mangea cinq, écœuré < manger(アンマンジァ・サンク・エクーレ) それをうんざりしながら5個食べた(単純過去形)

 

le regard sans cesse fixé sur < fixer(ルルギャー・サンセス・フィクセシュー)~をたえず見つめながら

 

les aiguilles de la vieille horloge(レゼギュイユ・ドゥラ・ヴィエィユオルロージュ)古い掛け時計の針