フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

フランス語の慣用表現「おいくら?」

ー Je peux encore prendre une bière ?  Je serai en mesure de vous rembourser tout à l’heure, à moins…

ー À moins que quoi ?

ー Que son sac… Enfin… Une bière ?

ー Garçon !  Deux demis…  Et vous me direz ce que je vous dois.

(©Georges Simenon : Le Voleur de Maigret; Chap.1er) 

 

「もう一杯ビール飲んでもいいですか?あとでお返しできるでしょうから、少なくとも・・・」

「少なくとも何が?」

「彼女のハンドバッグが・・・結局・・・ビールを一杯?」

「お兄さん!中2つだ。あんたはあとでいくらなのか言えばいいよ。」

(#93『メグレの財布を掏った男』第1章)(メグレの泥棒)

 

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*若い男はメグレを呼んだ肝心の目的を話す段にになってうろたえ始めた。

 

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Je peux encore prendre une bière ? < pouvoir(ジュプーザンコー・プランドル・ユヌビエール)もう一杯ビール飲んでもいいですか?(飲めますか)

 

*Je serai en mesure de < être(ジュスレ・アンムジュール・ドゥ)私は~ができるだろう(単純未来形)être en mesure de inf. ~ができる

 

de vous rembourser tout à l’heure(ドゥヴ・ランブルセ・トゥタルー)あとであなたに返金することが

 

À moins que quoi ?(アモワンク・クワ)少なくとも何が?

 

Que son sac(クソンサク)彼女のハンドバッグが

 

Enfin(アンファン)結局

 

Une bière ?(ユヌビエール)ビール一杯

 

Garçon !  Deux demis(ギャルソン・ドゥドゥミ)お兄さん!中グラス2杯だ。

 

Et vous me direz < dire(エヴムディレ)それであなたは私に言うだろう(単純未来形)⇒あとで言ってくれ

 

ce que je vous dois < devoir(スク・ジュヴドワ)直訳では「私があなたに借りがあること」になって、あたかもメグレが若い男から借金しているように受け取れるのが変だ。しかしこの “je vous dois” は常用句であって、レジで支払うときに「おいくら?」(Je vous dois combien?) ときくときに使っている。(時々 combien は省略される)従って訳としては「いくらなのかを」が適当だと思う。