フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

(こだわりの酒) カルヴァドス vs 牛乳

ー Si, en attendant le tramway, nous allions boire un verre dans ce bistro (---) ?...(---) Pour moi, ce sera un calvados.  Et pour vous ?

ー On peut obtenir un verre de lait ?

  Était-ce pour cela que cet homme de trente-cinq ans avait le teint du même rose que le mufle humide d’un jeune veau ?

(©Georges Simenon : Cécile est morte; Chap.1er de 3e Partie) 

 

路面電車を待ちながら、このビストロで一杯飲みませんか? (---) 私はカルヴァドスだ。あなたは?」

ミルクを一杯いただけますか?」

 この35歳の男が若い仔牛の湿った鼻先のような赤らんだ顔色をしているのもそのせいなのだろうか?

(#41『セシルは死んだ』第3部・第1章)

 

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Crédit photo : Groupe vétérinaire - Univet

71130 Gueugnon

 

*第3部に入っていよいよ事件が大詰めになるところに、急に面倒な人物が登場する。それは米国フィラデルフィアの犯罪学研究所からやってきた若いスペンサー=オーツ氏であり、来訪の目的は「メグレの捜査手法の研究」だった。フランス語での会話はほぼまったく問題がないらしく、原文の記述も雄弁に続く。ただし英米人は、昼日中から酒を飲む習慣がないらしく、ここで「息抜きに一杯」と誘われても「牛乳」と答えるので、メグレは大いに驚く。

 

en attendant le tramway < attendre(アンナタンダン・ルトラムウェィ)路面電車を待ちながら

 

Si nous allions boire un verre < aller(シヌザリオン・ボワールアンヴェール)一杯飲みに行ったらどうか(条件法)

 

dans ce bistro(ダンス・ビストロ)このビストロに

 

Pour moi, ce sera un calvados < être(プーモワ・ススラ・アンカルヴァドス)私はカルヴァドスだな(単純未来形) 

 

Et pour vous ?(エプーヴ)それであなたは?

 

*On peut obtenir un verre de lait ? < pouvoir(オンプートポトニール・アンヴェール・ドゥレ)ミルクを一杯いただけますか? avoir / prendre でなく obtenir という動詞を使うのも米国人らしい「外国語としてのフランス語」らしさがある。 

 

Était-ce pour cela que < être(エテス・プースラ・ク)~はそのせいだったのか?(半過去形)

 

cet homme de trente-cinq ans(セトンムドゥ・トラントサンカン)この35歳の男 

 

avait le teint du même rose que < avoir(アヴェ・ルタンデュ・メームローズ・ク)~と同じような赤らんだ顔色をしていた(半過去形) 

 

le mufle humide d’un jeune veau(ルミュフル・ユミド・ダンジューヌヴォー)若い仔牛の湿った鼻先