フランス語で楽しむ「メグレ警視」

メグレ警視の原作本を味読する立場からフランス語の謎解きを試みます。横文字の文章を読み慣れるように

フランス語の慣用表現「低い手をする⇒ 盗む、奪う」

 Pourquoi (---) avait-elle disparu, laissant la maison en plan, n’emportant même pas l’argent du tiroir-caisse ?  Il est vrai qu’il s’y trouvait à peine une centaine
de francs. Sans doute Albert mettait-il son argent ailleurs et avait-on fait
main basse dessus, comme on avait fait main basse sur tous ses papiers
personnels.
(©Georges Simenon : Maigret et son mort; Chap.4)

 どうして (---) 彼女は店をほったらかしにしていなくなったのか?レジの金さえも持たずに?そこには確かに百フランばかりの金があった。おそらくアルベールは余所にも自分の金を置いていて、奴らはそれを奪ったのだろうか?身元がわかるすべての書類を奪ったように。
(#55『メグレと殺人者たち』第4章)

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*被害者の男がここでカフェを営んでいたのはわかったが、その妻ニーヌの姿は見つからなかった。男が電話で「メグレも知っているはず」と言っていたニーヌのことは、メグレはどうしても心当たりがなかった。
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Crédit photo : Sortie du livre
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Pourquoi avait-elle disparu < avoir, disparaître(プルコヮ・アヴェテル・ディスパリュ)どうして彼女はいなくなったのか?(大過去形・疑問文)  

*laissant la maison en plan < laisser(レッサンラメゾン・アンプラン)店をほったらかしにして(現在分詞) en plan そのままで、すっぽかして、途中で

n’emportant même pas l’argent < emporter(ナンポルタン・メームパ・ラルジャン) お金さえも持って行かずに(現在分詞)

du tiroir-caisse(デュ・チロワールケス)レジの

Il est vrai que(イレヴレ・ク)~は本当だ

il s’y trouvait < se trouver(イルシトルヴェ)そこにあった(半過去形)

à peine une centaine de francs(アペーヌ・ユヌサンテーヌ・ドゥフラン)百フランばかりの

Sans doute(サンドゥト)おそらく

*Albert mettait-il son argent ailleurs < mettre(アルベール・メッテティル・ソンナルジャン・タィユー) アルベールは余所に自分の金を置いていた(半過去形)
ここでは、Albert と先に固有名詞を言った後で il の代名詞を続けにくいので、倒置形で続けた。必ずしも il を入れないといけない訳ではないが、強調する意味があったと思われる。

*avait-on fait main basse dessus < faire(アヴェトンフェ・マンバス・ドシュ)奴らはそれを奪ったのか(大過去形・疑問文)dessus は前の文節にあった単語(ここでは argent)に前置詞 sur をつける代わりに「それを」と言い換えて代名詞的に使っている。
**faire main basse sur qc. 慣用表現で「盗む」「奪う」main には冠詞が付かない

comme on avait fait main basse sur < faire(コム・オンナヴェフェ・マンバスシュー)奴らが~を奪ったように(大過去形)

tous ses papiers personnels(トゥセパピエ・ペルソネル)彼の身分証明書類をすべて